オリックス西野真弘内野手(32)には、どうしても感謝を伝えたい人がいた。「応援してくれている人がいる。その人のために頑張ろうと思いました」。“その人”の名は…。お笑いコンビ「ますだおかだ」の岡田圭右(54)だった。

昨年のシーズン前。西野は何げなくネット記事を見ていた。そこでたまたま目にしたのは、長年のオリ党芸人として知られる岡田のインタビュー。オリックスについて語る記事の中に、中川、駿太(現中日)と自分の名前。チームの中堅選手を応援する言葉が並んでいた。

「その時は試合に出られていなくて、なかなか名前も挙がらなくなっていた時期でした。応援してくれる人がいる。その人のために頑張ろうと思いました」

昨季はシーズンが開幕すると、43試合に出場し打率2割8分9厘。リーグ連覇を果たし、日本シリーズでも第5戦でサヨナラ勝利を呼び込む投手強襲安打を放つなど、ここぞでいぶし銀の働きを見せた。偶然目にしたエールが、プロ8年目の心に炎を燃やしていた。

待ちに待った瞬間は、思わぬ形でやってきた。岡田が9日の日本ハム戦(京セラドーム大阪)で、特別始球式を務めることになった。西野は始球式前に行うキャッチボールの相手役に立候補した。

「名前を出してくださってありがとうございます」。やっと、お礼を伝えることが出来た。あいさつだけだと思っていた岡田は「びっくりしていました」。差し込まれた様子ながらも「頑張ってや、頑張ってや」と言ってくれたという。その岡田も始球式後の囲み取材でやりとりを明かし「こんなええこと、ええ!ほんまにうれしいわ」と、心が温かくなったようだった。

西野は今季ここまで11試合に先発や代打で出場。21日西武戦(京セラドーム大阪)では4回2死一、三塁、西武今井の初球で同点スクイズをきっちり決めるなど、ここぞでの働きは健在だ。

最近はSNSなどで誰かを傷つける悲しい言葉も多いが、何げない一言が誰かを勇気づけることもある。そんなことを再確認した、温かい2人の交流だった。【オリックス担当=磯綾乃】