その発想はなかった。今季の阪神の四球大幅増の理由を岡田彰布監督(65)が、「四球の査定ポイントをアップした」と明かした。

6月2日に公開されたYouTubeチャンネル「虎バン 阪神タイガース応援チャンネルABCテレビ公式」で、掛布雅之氏(68)との対談で開幕前に、今季四球を選んだ時のポイントを「1ポイントから1・2ポイントとかにね」とアップすると選手に伝えたという。

その後、取材すると確かに開幕前に変更となっていた。水口栄二打撃コーチ(54)は「四球が大事というのは選手に浸透している。打ちにいって、ボールだったら見送れるというのが一番いい。かなりいい形で見送れている」と、四球増を歓迎している。12日現在で阪神は214四球と12球団トップ。200を超えているのも阪神だけ。確かに岡田監督は「こっちは(四球を)選べ選べ言うてるのに」と話していた。佐藤輝も5月上旬に「最初に『四球、評価するよ』みたいに言っていた」と話していたが、ポイントアップしていたとは。

この話を聞いて、頭の中に鮮やかによみがえったのが漫画「リトル巨人くん」に登場していた阪神の浪花くんだ。小学館のコロコロコミックや学年別学習雑誌で連載され、掛布氏や岡田監督がガンガン打って日本一になった85年に小学生の剛速球左腕の主人公巨人くんのライバルとして登場した強打者だ。彼は打席に向かう前に吉田監督に向かって「ホナ、監督はん、ヒット1万、二塁打2万、三塁打3万、本塁打は5万」と、個人的に監督に賞金を求めた。当時の岡田選手も描かれ「ホンマ、ガメツイやっちゃなあ」とあきれているほどの強烈なキャラだった。

浪花くんは個人プレーに走っているが、チーム全体で「四球を選べばポイントアップ」というのは、まさにプロの発想だ。プロ野球選手の「評価」はやはりお金、年俸だ。チーム全体で浪花くんのように、貪欲に打席に立ち、白星を重ねれば、彼が活躍した当時のように「アレ(=優勝)」に突き進みそうだ。

作者の内山まもるは11年に62歳の若さで亡くなった。「リトル巨人くん」は、実在のプロ野球選手たちが登場し野球の楽しさや厳しさが詰まっていた。77年から86年までさまざまな形で連載され、単行本も15巻出た。単行本に載らなかったが、巨人くんと広島小早川が一緒に食事に出かけ、おもちゃをプレゼントしたところを記者に激写され八百長疑惑をかけられた話もあった。「プロ野球」や大人の世界を学ばせてもらった。

チーム全体が「リトル阪神くん」こと浪花くんのようになり、首位を走る23年の岡田阪神が、最後、四球をどれくらい選んでいるのか、どんな形でシーズンを終えるのか、楽しみに追いかけたい。【阪神担当=石橋隆雄】

「リトル巨人くん」に登場する阪神吉田監督と岡田選手は、打席に向かう浪花くんの姿を見てつぶやく(C)小学館「リトル巨人くん」内山まもる著
「リトル巨人くん」に登場する阪神吉田監督と岡田選手は、打席に向かう浪花くんの姿を見てつぶやく(C)小学館「リトル巨人くん」内山まもる著