そのうな丼に、さんしょうはかかっていなかった。巨人秋広優人内野手(20)は、7月の甲子園での阪神3連戦遠征中、ケータリングに出たうな丼に「さんしょうは…辛いの食べられないんで。甘だれで」。猛暑の中、繰り広げられた伝統の一戦を前に、胃袋へかき込んだ。

「土用の丑(うし)の日」にあやかって、ピリ辛なリクエストを受けていた。左翼での秋広の守備に対し、原辰徳監督から「さんしょうがピリッと利いたような守備力になってほしい」と。遊撃坂本の復帰により、岡本和が一塁に入り、左翼での出場機会が増えた中で、指揮官から届いた辛口かつユーモアあるリクエストだった。

翌日7月30日中日戦(東京ドーム)、左翼線への当たりを、素手で打球処理してすぐさま送球。二塁進塁を防いだ。前夜の指揮官から届いた指摘に「ピリッとします」と背筋を伸ばしていった通りのプレー。打っても、5番初適時打が決勝打となった。さんしょうは食べられなくても、その意味はしっかりと胸に刻み込み、試合に臨んでいた。

たしかに20代の頃、その苦味と辛味の良さに気付かず、口にしなかった。ただ年を追うごとに欠かせないスパイスになり、思えばいつからか自然とかけるようになっていたさんしょう。うなぎにはさんしょう、巨人には秋広。伸び盛りの高卒3年目は、付け入る隙をなくしながら、巨人に欠かせない存在になっていく。【巨人担当 栗田成芳】