今年もベストナインやMVP、新人王、ゴールデングラブ賞の投票資格をいただいた。すでに投票は済ませた。取材を担当する西武からは、ベストナインには投票しなかった。

DHで中村剛也内野手(40)は考えた。ただ、試合数も本塁打数もロッテ・ポランコのほうが今季はふさわしいと思った。

三塁で佐藤龍世内野手(26)の名もちらっと浮かんだ。ただ9月以降での打撃成績上昇によるものがやはり大きく、シーズンを通せば、優勝への貢献度も含めてオリックス宗より上とは考えづらかった。

「10勝トリオ」を中心とした投手陣に比べれば、打線は苦しかった。不祥事による山川穂高内野手(31)の不在も、シーズンを通して大きくのしかかり、古賀悠斗捕手(24)らの奮闘は目立ったものの、確固たるレギュラーの座をつかむ若手は現れなかった。

常勝軍団を作るためには今後数年での、野手の底上げが何より必須になる。それこそベストナインにふさわしいような選手が複数、出現することが求められてくる、フェニックスリーグ取材中、山川に尋ねた。

「5年後を考えた時、一番伸びている可能性がある西武の打者は、誰だと思いますか?」

返事は少し食い気味。

「長谷川です。長谷川。即答です」

長谷川信哉内野手(21)の名を挙げた。支配下契約となった2年目の今季、サヨナラ本塁打など印象的な当たりが多く、スター性を感じさせた。

今後の成長を踏まえた時に、山川は「もう少し左中間からセンター方向へ大きいのが打てるようになれば、というところだと思います」と指摘した。確かにレフトへ引っ張る長打が多かった傾向にある。

長谷川と話す機会があったので伝えてみた。

「トッププレーヤーにそういうことを言ってもらえてうれしく思うと同時に、そういう選手になっていかないといけないと…」

あらためて肝に銘じた様子だ。10月29日のフェニックス中日戦(南郷)ではセンター方向へも含む3本の安打を放った。

「打率を上げるためには引っ張るだけじゃなく、今日みたいにセンター前とか詰まりながらのヒットとか、投手の足元を抜く打球とかを考えて」

フェニックスリーグでは、春季A班キャンプ地でもある宮崎・南郷スタジアムでの試合がほとんどだった。左翼からの海風が強く、グラウンド自体も広い。「どうしても体が開いちゃうところがあって」。

同30日にリーグ全日程を終えれば、今度は11月1日から高知・春野での秋季キャンプに参加する。

「左中間やセンターへの大きな当たりも、後々はやっていかないといけないと思います。まずは率を残してから、大きいのを打てるようにという感じで」

そのように未来予想図を描くから「春野ではひたすらセンターに大きいのを打てる練習に取り組もうと思います」と明確だ。髪をミルクティー色にして臨んだ約3週間のフェニックスリーグを終え、次なる地へ。「きついですけど…行ってきます!」。全ては晴れ渡る5年後のために。【西武担当 金子真仁】

西武対中日 9回裏西武1死、長谷川はサヨナラの左越えソロ本塁打を放つ(2023年6月7日撮影)
西武対中日 9回裏西武1死、長谷川はサヨナラの左越えソロ本塁打を放つ(2023年6月7日撮影)