旧友たちの活躍をテレビ画面から目に焼き付けている。5月に広岡とのトレードで巨人に加入した鈴木康平投手(29)が、古巣オリックスの日本一連覇を願った。

甲子園の異様な熱気を自分のことのように振り返る。日本シリーズ第5戦。オリックスは2点リードしていた8回、リリーフ陣が崩れて一挙6失点で逆転負けを喫した。山崎颯、宇田川と侍ジャパンメンバー2人の投入も実らなかった。鈴木康は言う。「やっぱり甲子園のあの雰囲気はすごいですよ。のみ込まれちゃう気持ちはすごくわかる。パ・リーグの時には経験したことがなかったです」とかつてのチームメートをおもんぱかった。

自らも苦い経験があるからよく分かる。移籍後4試合目の登板となった5月26日の阪神戦。1点リードの7回に登板も1/3回3安打2失点で逆転を許し、移籍後初失点、初黒星を喫した。初の伝統の一戦。「普段はゾーンに入って応援が入ってこないんですけど、すごく応援が入ってきちゃって、のみ込まれた感がありました」と面食らった。

もつれにもつれる日本シリーズは3勝3敗で5日、勝負の第7戦に突入する。パ・リーグ最少のチーム防御率2・73を誇る強固な投手陣、リリーフ陣を形成する理由を肌で感じていた。山本や山崎颯、宇田川ら侍ジャパンメンバー以外にも、山下、東ら150キロ後半を計測する投手がズラリ。鈴木康自身も最速158キロを誇る。「相乗効果じゃないですか。みんなが速いし、中嶋監督も速い球好きなんで」と速い球を投げるための土壌と雰囲気があった。

強く、速い球を投げるため、という部分から逆算してウエートトレーニングやブルペンでのキャッチボール、遠投をメニューにくみ込む。「強い球をどれだけ投げるか。助走つけてでも投げるか。ブルペンでも傾斜でも、コントロール気にせずに出力を出す練習をしていかないと、スピードって上がらないと思ってる。ケガするリスクもあるし、肩肘痛めるリスクもあるんですけど、ギリギリのラインを攻めていかないと、スピードは上がってこないんですよ」。剛速球投手たちを近くで見てきたからこそ、分かったことだった。

古巣の日本一を願う。同時にその場に立てない悔しさをかみしめながら、来年の対戦も心待ちにする。「最後は楽しんで欲しいですね。中嶋監督の胴上げを見たいです」。移籍1年目の今季は33試合に登板して1勝1敗、防御率6・59で13ホールド。来季は新天地でのリリーフ定着へ、メッツ千賀の握りを参考にした落差の鋭い「おばKフォーク」を特訓中。古巣ナインとの日本シリーズでの対戦を思い描いて、汗を流している。【巨人担当 小早川宗一郎】