失敗はつきものだ。その失敗にどう向き合うか。巨人ドラフト3位・佐々木俊輔外野手(24=日立製作所)は自分と真正面から向き合っている。

中堅の開幕スタメンを期待されてキャンプは1軍スタート。宮崎キャンプ第1クールで、打球速度がチーム上位の170キロを計測。期待を受けて11日の紅白戦に「5番中堅」でスタメン出場した。

結果は4打数無安打2三振。守備では右中間の飛球を落球(記録は失策)、中前打の処理をもたつき打者走者に二進を許すなど散々なデビューだった。だが試合後、佐々木が発した言葉は意外なものだった。

「まあ、でも、良かったと思います。自分の課題が見つかって、あとはやるだけなので」

決して投げやりな気持ちから出た言葉ではない。取材ではめったに表情は緩まない、職人のような性格。それでも、その表情は確かにいつもよりは少し暗かったように見えた。

失敗は怖くないのか。不安はないのか。本音を漏らした。

「いやもう、全部不安です。自分は今までそんな上のクラスでできた人間じゃないので。今まで失敗してきた中で、なんだかんだうまくいって、ここ(プロ)まで来られた立場だと思ってるので。常にうまくいく立場でも、技術があるわけでもない。不安でしかないです」

佐々木は帝京(東京)→東洋大→日立製作所と野球エリートの経歴。だが高校時代は甲子園には届かず。大学時代は主将に就任して迎えた4年春に東都大学リーグ2部落ち。社会人2年目は都市対抗と日本選手権の「2大大会」出場を逃した。野球人生の要所で悔しさを味わってきた。

ドラフト指名も本人にとっては意外だった。

「プロに行けるなんて思ってなくて。次のシーズンに向けて普通に練習してたので」

巡り巡って飛び込んだプロの世界。「結果」でしか不安はかき消せない。

「自分のイメージできるバッティングができてくれば少しずつ不安が薄れていく」

結果を求めてバットを振り、ボールを追った。フリー打撃では右翼スタンド中段まで飛ばすパワーを秘めるも、広角に打球を飛ばすスタイルを崩さず逆方向へ打ち続けた。矢野打撃コーチからは「ボールをつぶす意識」を授けられた。亀井外野守備兼走塁コーチとベテラン長野からは紅白戦での失策を「ちょっと大事に行き過ぎたよね」とアドバイス。第三者の意見を取り入れながら、失敗した自分に真正面から向き合った。

対外試合までの実戦は9打席で安打はなかった。すると18日のサムスン戦(練習試合)で“プロ初安打”含む3安打5打点、23日の阪神戦で1安打1打点、翌24日広島戦で4安打3打点と大当たり。一気にスポットを浴びた。

サムスン戦後の第一声は「まずは一安心してます」だった。やっと出た1本に一息ついた。一瞬緩んだ口元を引き締めて続けた。

「たかが1試合なので。これを継続できるように」

1日に満足しない。またやってくる明日に向けて、バットを振り続ける。【巨人担当=黒須亮】