27日巨人戦の試合時間は4時間を超えた。広島林晃汰内野手(24)が球場から出てきたのは、試合終了から約1時間30分後だった。「並々ならぬ覚悟で試合に入っていたんですけどね…。チームに迷惑をかけられない、と。サードを1試合守るとしんどいですね」。三塁でのフル出場は、23年5月25日中日戦以来、794日ぶりだった。打球は1度も飛んで来なかったが、表情からは疲労がにじんでいた。
入団時から「将来の大砲候補」と期待された。高卒3年目の21年には10本塁打をマークした。だが、翌22年は1軍出場なし。新井監督が就任した23年に再び出場機会を得て、2年ぶりの特大弾を放ったが、1軍定着には至らなかった。当時三塁を争っていたデビッドソンとは、打力の印象度はそれほど差はなかったが、守備面では大きく水をあけられていた。守備力が出番を減らす要因となっていた。
持ち味の打力を磨きつつ、課題の守備にも真摯(しんし)に向き合ってきた。「足を引っ張らないように、そつなくできるようにと。2軍でも、どのポジションでも高い意識で守っていました」。今季も2軍生活が続いたが、7月17日に再昇格。20日ヤクルト戦から4戦連続スタメン出場中。27日は冒頭の通り、三塁で先発出場した。
もっとも、それは守備力だけが理由ではない。新井監督は林の三塁起用に「本来であれば守りも重要視してやっているので(起用できなかったかもしれない)。こういう状況だから(起用できる)」と説明。首位阪神に大きく差をつけられたチーム事情が大きく影響している。きっかけがチーム事情であっても、2戦連続本塁打など出場機会をものにしているのは自身の力だ。新井監督も「少ないチャンスで結果を残しているので、いろんな形で使ってあげないといけないと思っている」と目を細める。
大きなチャンスを前に、林は「チャンスはピンチ」と自らに言い聞かせ、危機感を常に持つ。ポジションをつかみかけた翌年にどん底まで落ちた過去があるだけに「本当に痛い目を見た。今が一番大事」と表情を引き締める。
27日試合後の疲れた表情は、三塁でのフル出場だけが理由ではなかった。再昇格後初めて無安打に終わった打撃内容を見つめなおすため、静まり返った一塁側ブルペンで黙々とバットを振っていた。ひとつひとつ上位を目指すチームとともに、林もまた1歩1歩新たな境地へ進もうとしている。【広島担当=前原淳】




