5カ月ぶりに大好きなマウンドに戻ってきた。巨人山上信吾投手(21)は7日のトライアウトで打者3人に対し無安打1四球。6カ月前に山口3軍投手コーチと取り組んでいた落ち幅の大きなフォークを初解禁し三振も奪った。「やっぱりマウンドはいいなと。素直にうれしかったです」。久々の感覚に、気付けば笑みがこぼれていた。

2月、春季キャンプで守備練習する山上
2月、春季キャンプで守備練習する山上

心を鬼にして、7月に野手に転向していた。常磐(群馬)から17年育成2位で入団した最速152キロ右腕は、3年間で2軍戦出場は1試合。3軍でくすぶっていた。主に投手専任ながら高校通算10本塁打を放った打力が評価され、打診を受けた。本心では投手を続けたかったが「やりたいことをやっているだけではだめ」とバットを握ることを決断した。

巨人山上の年度別成績
巨人山上の年度別成績

休日返上で寮でバットを振り込むなど野手として本気で支配下登録を目指した。だが、投手への思いを捨てきれない自分もいた。三塁や遊撃から見る投手の姿が輝いて見え「そう思う時点で投手をやりたいんだなと」。思いは切っても切り離せなかった。

戦力外通告を受けた時もすぐに切り替えられた。「もう1回投手に挑戦できる」。再転向を決心し、覚悟を決めた。5カ月のブランクを埋めるため、毎日ブルペンにも入った。マウンドに立てることがうれしくて仕方がなかった。

20年巨人退団選手(※は育成)
20年巨人退団選手(※は育成)

NPB球団から声はかからなかったが、諦められない。だって投手ができるから。野手に挑戦して投手への思いはより一層強くなった。野球漫画「MAJOR」の主人公の茂野吾郎に憧れ、小学3年生から磨いてきた直球が武器。昨季まで巡回投手コーチを務めていた小谷正勝氏からは「将来、真っすぐで1億円を稼げる」と言われるなど潜在能力は高い。社会人野球などで結果を残せば、再びスカウトの目に留まるかもしれない。場所は問わない。投げる場所を求めてオファーを待つ。【久永壮真】