東京オリンピックで金メダルを獲得するには、予選から5連勝すれば最少で5試合、5勝3敗のケースでも優勝の可能性があり、その場合は最大で8試合戦わなければいけない。ペナントレースのような長期ではなく、短期決戦なのだが、勝ち抜くための私なりの方法論をしるしていく。

人によっては「野球は点取りゲームだ」と言われる人もいるが、「野球は点を与えないゲーム」とも言える。点を取らなければ勝てないが、点を与えなければ負けない。この観点から見れば、長期も短期も点を取られない投手を中心に、守りがいいチーム作りを推奨する。

野球は投手次第で、展開が大きく変わる。確率のスポーツとも言われ、好打者の基準とされる打率3割で言えば、10打席中3打席でヒットを打つが、それ以外の7打席では凡退する。打線は水物とも言われるゆえんで、いい投手と対戦すれば打てる確率はもっと低くなる。

山本由伸(2021年5月12日撮影)
山本由伸(2021年5月12日撮影)

短期決戦はより優秀なリリーフ投手が多いほど勝つ確率は高くなる。現在、日本球界でNO・1と言えるオリックス山本由伸を抑えに推す理由がそれで、独特の間合いを持ち、初見では打ちづらいソフトバンク石川柊太をセットアッパーに推薦したのも、リリーフを重視するからである。

短期決戦において、勝てる投手とはどんな投手か。先発投手で言えば、低いところにキレのあるボールを投げられる投手である。最高なのは、三振を取れることだが、レベルが上がれば簡単には取れない。低めにボールを集め、ゴロを打たせる投球ができれば、大ケガは少なくなる。

06年の夏の甲子園で優勝した早実の斎藤佑樹(日本ハム)のピッチングは、多くの方の記憶に残っているだろう。もちろん、プロと高校生ではレベルは違うが、当時の彼は低め、低めにボールを集めながら、投手の原点と言えるアウトロー近辺にも投げ込めた。

短期決戦で勝つために、特に大事なのは先に点を取られないことだ。昨年のソフトバンクと巨人の日本シリーズは記憶に新しいのではないか。4試合中3試合でソフトバンクが先制。序盤から試合を優位に進め、モイネロ、森を中心としたパワーピッチャーへの継投で試合の主導権を握り続けた。

リーグ戦方式のペナントレースとは違って、短期決戦はより投手の分担が大切になる。ペナントレースでは好調を継続できる周期は約3カ月と言われるが、短期決戦は「よ~いドン」から勝っていかなくてはならず、全選手が開幕日にピークに持っていくことが重要。適材適所をいち早く把握し、起用することが結果へとつながる。(つづく)

小谷正勝氏(19年1月撮影)
小谷正勝氏(19年1月撮影)

◆小谷正勝(こたに・ただかつ)1945年(昭20)兵庫・明石市生まれ。国学院大から67年ドラフト1位で大洋入団。通算10年で24勝27敗。79年からコーチ業に専念。11年まで在京セ・リーグ3球団で投手コーチを務め、13年からロッテで指導。17年から19年まで再び巨人でコーチを務めた。