ロッテ、51年ぶりの優勝なるか-。ツイッター上で一喜一憂するファンたちは、どんな熱い顔で応援しているんだろう。旧本拠地の川崎から南千住経由で幕張まで約60キロを歩き、出会い、多くの人生物語が心にしみた。会えなかったファンからも多くの思いが届いた。全4回のラストに、その一部をお届けする。
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のべ2日間、ロッテの舞台を歩きながら、スマホにも物語が届いた。
「本当はお会いしたかったんですが、あいにく今日、手術なんです」
桃原則子さんからのダイレクトメッセージは、銀座の手前で受信した。
「8月にマリーンズの浮上が始まった頃、突然ガンの診断を受け、健康120%だった私が急に大学病院、入院、手術と気がめいる話に心が折れかかって」
仕事を通じ、バレンタイン元監督の通訳とつながりもあり、ロッテをずっと応援してきた。突然の苦難に支えになった。
「不安に押しつぶされそうだった時に、ロッテの優勝への希望がどれほど救ってくれたことか。選手や関わる人たちすべてに本当に感謝しかありません。手術が終わって、病室に戻って、またライオンズ戦を応援するぞ、と今は勇気をかき集めているところです」
18時、私が東京スタジアム跡地に着いた頃に麻酔から覚めた。「藤岡選手が死球を受けても歯を食いしばって…涙が出ました」。
熱心なファンの男性(48)が病に倒れたのはCS直前、11月4日だった。男性の友人から、ダイレクトメッセージが届いた。
「脳出血でした。右手と右足が動かしにくくて、ろれつが回りません」
ZOZOマリンにはほぼ皆勤賞。去年は藤原の弾丸ライナーが飛んできて、炭酸飲料に直撃した。びしょぬれで喜んだ。ビジター応援にも夫婦で全国へ飛んだ。それが突然。
「人生で初めて死を覚悟しました」
意識混濁の中、妻にはあえてマリンでのCSに行ってもらった。いつものライトスタンド。「1人で寂しかったですが、ファン仲間に励まされ、勝利にも涙しました」と夫人。入院中に1日だけ外泊を許され、夫婦で散歩へ。行き先はどちらからともなく「マリンにしようか」。つえをついて歩き、普段はしないツーショットも撮った。「またマリンを、自分の足で歩けたうれしさでいっぱいで」。
日本シリーズも終わった12月2日。互いのことは知らずとも、ロッテに支えられ闘病した2人が、偶然にも同じ日に退院した。「何とか春までに英気を養って」「病を克服して来年マリンへ戻りたいです」。届いた思いもほとんど同じ。100日少々で来季が開幕する。熱パは元気の源。プロ野球は人々に支えられている。【金子真仁】