ドラフトファイル:仲地礼亜
ドラフトファイル:仲地礼亜

沖縄本土復帰50年の節目に、沖縄県の大学から初のドラフト指名プロの誕生が確実になった。米軍嘉手納基地に近い嘉手納高を経て沖縄大でもまれ、NPB12球団が注目するまでに成長した剛腕が、最速151キロ右腕、沖縄大・仲地礼亜投手(4年=嘉手納)だ。12球団との面談は終え、中日が1位指名を公表。仲地は指名順位に関係なく全球団OKの姿勢で「選ばれたところに行きたい。ドキドキしています」と、運命の日を待つ。

大城貴之監督(51)によると、「ドラフト外(入団)は過去にもあるが、ドラフト指名で言うと県内の大学ではなかった」という快挙になる。「(本土復帰)50年と偶然かもしれませんが、野球の歴史とも並行している。歴史の積み重ねで、こういう選手が誕生した」といい、戦後の沖縄の歩みにも思いを重ねた。

球速アップと、多彩な変化球習得で飛躍した。高3時の仲地は最速145キロで、変化球はスライダーとフォークの2種類だった。大学では今春習得したチェンジアップをはじめ、カーブ、カットボール、スライダー、ツーシーム、スプリットの6種類を巧みに操り、投球の幅を広げた。

一躍、全国区になったのは3年春の全日本大学選手権。1回戦で強豪の名城大に敗れたが、8回1失点と好投し、最速149キロをマークした。プロ入りを意識した昨秋からは、全体練習後にトレーナーの指導で週2~3日の筋トレに取り組み、食事の量や走り込みを増やした。体重は昨春から10キロ増の83キロ。特に力を入れた下半身強化が実り、今年1月の練習試合で最速を151キロに更新した。父が鮮魚の仲卸業に携わる関係で、幼少期から魚はよく食べてきた。そのせいか、ここまで大きなけがもなく“骨太”に育った丈夫な体も取りえ。進化を重ね、5月の試合には12球団30人のスカウトが集結するまで評価は高まった。

目指すは日本ハム金子千尋投手だ。動画も参考にしている。「変化球がうまい。自分もけっこう変化球を投げる方なので、そういう変化球を使える投手になりたい。真っすぐだけでなく、いろんな球種で勝負できるようになりたい」と将来を描く。迫るドラフト会議に向けて「沖縄でも(プロを)目指せると思ってくれる人が増えたらいいと思います」と語り、沖縄球児に新たな夢を示すパイオニアになりそうだ。【菊川光一】(この項おわり)

21年6月、名城大戦に登板し、笑顔を見せる沖縄大・仲地
21年6月、名城大戦に登板し、笑顔を見せる沖縄大・仲地