田村藤夫氏(63)が3年連続でフェニックスリーグ(宮崎)から現地リポートする。今季のファームを振り返る。

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フェニックスリーグを含めて、ファームを今年も30試合は見てきた。スタンドからの取材が解禁されていない球団もあり、訪れた球場はヤクルトの戸田、日本ハムの鎌ケ谷、DeNAの横須賀と偏りはある。まんべんなく見ていないが、今季のファームを振り返る。

ここ数年の傾向として、育成を含め有望な投手を数多く獲得してきた球団が、その恩恵を受けていると感じる。ソフトバンク、そしてここに来てオリックスにその流れを強く感じる。さらに目線を上げると近い将来、その系譜を継ぐ可能性は日本ハムにある。

フェニックスリーグ 日本ハム対阪神 6回を投げ1失点の達孝太
フェニックスリーグ 日本ハム対阪神 6回を投げ1失点の達孝太

吉田など高卒4年目が若手の代表格だったが、もはや達、畔柳、松浦という、より若い世代の充実が見える。達には3イニング以上の制球力に課題は感じるものの、同期高卒投手が多いことで、成長の速度が早まる可能性も見える。

ここにDeNA小園、巨人代木、ヤクルト竹山も加わり、投手の台頭してくるタイミングがどんどん早くなっていく流れを感じる。そうなると、高卒では5年目以降の投手にも、より一層の危機感が出てくる。サイクルの速さは、活性化とともに競争の激しさと表裏一体だ。

この背景には、ロッテ佐々木朗、ヤクルト奥川(故障中だが)、オリックス宮城の世代が、どんどん主力で活躍する実績が影響している。素材そのものも確かにいいが、近年の高卒組は球種も格段に増えた。体のサイズも大きくなり、スピードも備えている。

一方、高卒投手の台頭の陰で、大卒・社会人も含めた若手野手は明らかに1軍昇格が狭き門になっている。育成に時間がかかる捕手を除いた時、野手はバッティングで苦戦するケースがほとんどだ。最近のルーキーですぐに結果を出したのは、牧、佐藤輝、中野、強いて言えば紅林くらいか。

イースタンで言えば、DeNA小深田には可能性を強く感じるが、その他で言えば楽天黒川、捕手の安田くらいか。巨人秋広、西武渡部らのスラッガー候補は、まだ安定して率を残せないでいる。

プロ野球評論家の田村藤夫氏(19年12月26日撮影)
プロ野球評論家の田村藤夫氏(19年12月26日撮影)

特筆すべきはヤクルト内山壮が高卒2年目で、日本シリーズの大舞台で起死回生の同点3ラン(第2戦)を放った。バッティングで2年目から結果を出した内山の打撃は、今後の高卒野手組にとって大きな励みになるはずだ。(日刊スポーツ評論家、この項おわり)