WBCに挑む侍ジャパンのメンバー30人が決定した。連載「侍の宝刀」で、30人の選手が持つ武器やストロングポイントにスポットを当てる。

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巨人大勢投手(23)が“ガチストレート”で世界の頂点に導く。年代別を通じても初の国際大会。日の丸を背負うことが決まった巨人の若き守護神は「日本代表のユニホームを着て、戦えることを誇りに思います」と胸を張った。昨季の新人から唯一の選出。スター街道を駆け上がっている。

ルーキーイヤーの昨季、新人歴代最多タイの37セーブをマークして新人王に輝いた。サイド気味の肘の高さから浮き上がるような最速159キロの直球を最大の武器にする。同僚の高梨が作ったハッシュタグ「#大勢はガチ」は繰り返しSNSのトレンドワード入りするなど世間へインパクトを与えた。新型コロナの陽性判定を受けて出場はできなかったが、ファン投票で選出されたオールスターゲームでは「一番の持ち味は真っすぐだと思う」と直球勝負を宣言していた。並みいる海外の強打者も押し込めるパワー満点の“ガチストレート”が火を噴く。

22年11月 日本ハムとの強化試合で力投する大勢
22年11月 日本ハムとの強化試合で力投する大勢
大勢の22年11月強化試合成績
大勢の22年11月強化試合成績

落差の大きいフォークとスライダーを交えて狙って三振を奪える点も大きい。リーグ最終盤の10月1日のDeNA戦(横浜)、1点を追う8回無死満塁の大ピンチでマウンドへ。1点が致命傷になる緊迫の場面でも、急きょ巡ってきた出番に緊張はなかった。流れを引き寄せて逆転につなげるべく、開き直って3者連続三振をあえて狙った。結果、狙い通りの3者連続空振り三振。ピンチで1点も与えたくない場面での起用も考えられる。

大ピンチや大舞台でもぴくりとも動じない鋼メンタルも心強い。WBC本大会も「緊張しない気がします」とケロリ。やるべきことに集中するから余計な心配も不安もない。幼少期からやけどしてもケガしても母いずみさんのひと言目は「大層大層言わない!」。まずは何があっても「たいしたことはない」と前を向く超ポジティブ思考が自然と身に付いた。

新人王で満足する気はない。今キャンプでは昨秋から継続して取り組んでいる右膝を折ってからヒールアップして投球する“カックン投法”をブルペンでも披露。軸足の足首、膝、股関節に体重が乗るイメージを染み込ませる。「ファンをワクワクさせる、魅了する選手になりたい」という理想へ近づくため、妥協もサボりもしない。「WBCに関しては、クローザーをやりたいとかこだわりはない。求められたところで出す準備をしっかりしたい」と、守護神だけでなく勝負どころで右の強打者を任されるスポット的な役割も大歓迎。ガチ右腕がガチで世界一を奪いに行く。【小早川宗一郎】