ヤクルト村上宗隆内野手(23)が15日、沖縄・糸満での練習試合で同じWBC代表のロッテ佐々木朗希投手(21)と激突する。16日はいよいよ侍ジャパン強化合宿の集合日。初のWBCで目指す世界の頂点へ、村上の思いを聞いた。

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「村神様」

この言葉ひとつに村上が2022年に達成した数々の偉業が凝縮されている。

令和初となる史上最年少3冠王、日本選手最多シーズン56本塁打、プロ野球初の5打席連続本塁打、そしてファンが名付けた愛称である冒頭の言葉が昨年の「新語・流行語大賞」の年間大賞に選出された。その存在は野球界から広く世間一般へと羽ばたいていった。

室内での打撃練習するヤクルト村上。後方は高津監督(撮影・足立雅史)
室内での打撃練習するヤクルト村上。後方は高津監督(撮影・足立雅史)

若き主砲はWBCでも「4番を打ちたい」と宣言。21年東京五輪で金メダルを獲得後、チームは2連覇を達成し、自らは3冠王に。自分のバットにかかる責任は重くなった自覚がある。「オリンピックと立場が違う。日本中の期待もある。しっかり自分の足元を見つめ直して結果を残せれば」。

小学6年生の卒業文集で「WBCに選ばれて世界で活躍したい」と書いたことを「覚えてます。書きました、最後に」。ついに現実となるが、もうこれはゴールではない。「そういう風に書いて今回のWBCなのでうれしい気持ちはある。でも僕の野球人生はまだまだこれから。これは1つの小さな壁として壊していきたい」

常に先を見据えるのには高校時代の悔しさがあったから。プロ入り後は順風満帆だが九州学院(熊本)では「甲子園も1年の時しか出ていない」と語る。「注目されるのは清宮(現日本ハム)や安田(現ロッテ)だった。彼らが輝いて見えた」。プロ野球選手の道を選んだ以上、高みへ突き抜けると決めた。「もっともっと上へ、ここで終わるような目標じゃない。全然満足はしていない」と、もう後ろは振り返らない。

常に十分な目標を掲げ、それを乗り越えていく「鬼メンタル」の持ち主である一方、「ロボットじゃないですから」と不安が襲うことも当然ある。「不安だし、怖いし。でもしっかり準備して結果が出て、ホッとする。このサイクルの繰り返し」と本音を吐露した。

練習中、気合の入った声を出すヤクルト村上(撮影・足立雅史)
練習中、気合の入った声を出すヤクルト村上(撮影・足立雅史)

気持ちが上向かないときのカンフル剤がある。エンゼルス大谷の打撃動画だ。「参考になる部分もあるし、モチベーションにもなる。野球選手としてどうみてもすごい。日本人で、メジャーでパワーとホームランで勝負できるのは大谷選手しかいないから」。

まさに村上の「宝刀」は一撃で試合を決める本塁打。WBC本番のビッグアーチを夢見るが「1人の野球人として当たり前に声を出す、全力疾走をする、しっかりと練習をする。それをやっていくだけ」。世界一への歩みを進める前に、村神様は足元を見つめ直した。【三須一紀】