WBCに挑む侍ジャパンのメンバー30人が決定した。連載「侍の宝刀」で、30人の選手が持つ武器やストロングポイントにスポットを当てる。

2月26日、ダルビッシュ(右)とグータッチする中村
2月26日、ダルビッシュ(右)とグータッチする中村

この2年で日本一、リーグ連覇をリードしたヤクルト中村悠平捕手(32)は自身の成長を実感している。「ここ2、3年で特にチームを引っ張る気持ちがものすごく芽生えました」。2年前、尊敬する元監督の古田敦也氏が春季キャンプの臨時コーチに来た際のアドバイスがきっかけだった。

「どんどん新しいことにトライしていこうと。僕もなかなか思い切ったことが出来ずにいたので、そこで一変できた」。中村の「変革」が始まった。例えば2ストライクと打者を追い込んだ場面。今までだったら変化球で誘ったり、ボール球を振らせるところを真っすぐでドンと行く。「2ストライクから打たれたら怒られるとよく言うけど、自分で根拠があれば全然いいと思えるようになった」。

キャッチングにも「変革」を。「フレーミング」と呼ばれる技術で、ストライクゾーン境界付近のボールを捕球した瞬間、ミットをわずかにゾーン内に動かすことで際どいコースの球でも「ストライク判定」の可能性を高めるもの。「チームメートが『あ、中村何か違うことやってる』と思ってくれれば。周りが見ているポジションなので、そういうところでチームメートが前向きになってもらえたら」と意図を語った。

主要国際大会での侍ジャパンは15年プレミア12以来だが「自分にとっては今回が初めての国際大会というまっさらな気持ちで臨む」と語る。日本が金メダルを獲得した21年東京オリンピックは代表選出を逃した。「素晴らしい成績で大会を終えた。やっぱりそのチームでそういう思いをしたかった。今回はそのチャンスがある。思い切ってWBCを迎えたい」と日の丸へ熱い思いがあふれた。

中村の主な国際大会成績
中村の主な国際大会成績

21、22年と連続でゴールデングラブ賞を獲得した侍ジャパンの野手最年長。人との壁をつくらず「コミュ力」の高さはお墨付きだ。2月27日、侍の強化合宿打ち上げ日には手締めのあいさつを担当し「栗山監督の下、全員が一丸となってチームジャパンとして必ず世界一とりましょう」と高らかに宣言した。古田氏の背番号「27」を受け継ぎ「変革」した頼りになる男が、世界一へのリードを果たす。【三須一紀】