WBCに挑む侍ジャパンのメンバー30人が決定した。連載「侍の宝刀」で、30人の選手が持つ武器やストロングポイントにスポットを当てる。

6日のWBC強化試合阪神戦で、4回裏から登板した侍ジャパン2番手の高橋奎(撮影・狩俣裕三)
6日のWBC強化試合阪神戦で、4回裏から登板した侍ジャパン2番手の高橋奎(撮影・狩俣裕三)

「メジャーに行きたい」。沖縄・浦添の球場控室。ヤクルト高橋奎二投手(25)は記者に囲まれながら、夢を語った。「自分がどこまで通用するのか。大谷(翔平)さんを見てその思いが一番大きくなりました」と、野球選手としての本能がうずいた。

より高く、腕や膝を上げて始動する迫力あるフォームから最速155キロの豪快なストレートを投げ込む左の本格派。WBCで対戦するメジャーリーガーへも「やっぱり真っすぐ。どこまで通用するか。バンバン投げていきたい」とワクワクが止まらなかった。

初の侍ジャパン選出。道のりは平たんではなかった。龍谷大平安(京都)から15年ドラフト3位で入団し、プロ2年目に左肩と腰を痛めた。「リハビリメニューがめちゃめちゃ嫌だった」が、それでも野球は嫌いにならなかった。「早く野球がしたい」。だから毎日のようにテレビで1軍の試合を見入った。「早くここに立ちたい。ただそれだけでした」。

それが野球脳を成長させた。同じ左腕でヤクルトの大先輩、石川に野球の話を教授されても若手時代は「何を言っているか理解できなかった」と振り返る。野球漬けの日々が高橋を成長させ、ローテを任され始めた21年シーズンぐらいから、投球フォームに関する石川理論がスッと分かるようになってきた。

「結果が出ない、ケガをする。そういったメンタル面の話も石川さんに数え切れないぐらいしていただきました」と話す。まさに「石川チルドレンか」と聞くと「そうですね。本当に助けられたと思います」と感謝した。

高橋奎二の22年11月強化試合の成績
高橋奎二の22年11月強化試合の成績

昨季はキャリアハイの8勝(2敗)を挙げ、プロ8年目でついに「高校時代から夢見ていた」日の丸を背負う。WBCでは第2先発としての役割が課されるが「何とか結果を出して、世界一を目指して頑張りたい」。その先も見据えた。「30歳までに行きたい」というメジャーへ「アピールしたい思いもある」。世界の野球界が見つめるWBCの舞台で、背番号47が大きく羽ばたく。【三須一紀】