MLBでは今季からの新ルール導入に伴い、本塁を除く各塁のベースがこれまでの約38センチ四方から46センチ四方に拡大された。塁上でのクロスプレーなど故障リスクを軽減し、盗塁増による試合のスピード化が主な目的とされる。すでに開幕後1カ月で盗塁数は増加傾向が表れており、戦術面での変化につながりそうだ。(本文中の記録は4月終了時点)

4月18日、ヤンキース戦の5回、二盗を決める一塁走者のエンゼルス大谷(右)
4月18日、ヤンキース戦の5回、二盗を決める一塁走者のエンゼルス大谷(右)

従来よりも厚みがなくなり、球界内でひそかに「ピザの箱」と呼ばれている新ベースに関して、選手や関係者は「ピッチクロック」や「シフト禁止」ほどは気にかけていない。エンゼルスの左腕サンドバルが「ベースカバーに入る時、より自信を持って踏めるという感じ。それ以外はあまり感じたことがない」と話すように、さほど影響は感じられない。その一方で、戦術面では着実に変化が見られるようになった。塁間が短くなったことに加え、けん制が2回までに制限されたこともあり、盗塁数が増加した。これまでのように連続してけん制する可能性が極めて低いため、走者はスタートが切りやすく、盗塁だけでなく、ヒットエンドランの頻度も格段に上昇した。

開幕以来、下馬評を覆す快進撃で地区首位を走るパイレーツのシェルトン監督は、昨季までとの明確な違いを指摘する。盗塁数41はメジャートップ。「ベースの変化を言う人もいるが、けん制の影響が大きい。連続してけん制することはないだろうし、実際に見ていない。それはアドバンテージになるだろう」。通算209盗塁のパ軍マカッチェンは「これまでは(スタートする)スポットを決めていたが、今は少し大きくした」と、リードを広げたことを明かした。

ベース拡大だけでなく、けん制の回数が制限され、さらにピッチクロックの時間内に投げる必要があるため、セカンドリードを取る選手も増加した。メジャー全体で走塁への意識は高まっており、ドジャースのロバーツ監督は「盗塁企図は増えるはずで、防ぐことを話し合っていく」と対応策の必要性にも目を向ける。本塁打依存の大味な試合が、スピーディーでスリリングな展開に変化していけば、ベース拡大の効果と言えるかもしれない。【MLB取材班】

最近10年の盗塁データ
最近10年の盗塁データ

ベースの拡大は、盗塁数の増加と塁上での交錯によるケガ防止に効果を期待され導入された。ベース自体の大きさが変わったことにより、一塁から二塁と二塁から三塁の塁間も4・5インチ(約11センチ)短くなった。

このルール導入を受け、多くの球団が開幕前から積極的に盗塁することを目標に掲げた。4月を終了した時点での盗塁数メジャートップはパイレーツで41。昨年4月のチーム盗塁数9と比べると驚異的な増加となった。

MLB全体では、4月末までの開幕約1カ月で総盗塁数602で、年間で2486盗塁だった昨季の約4分の1に到達している。開幕から32日間の盗塁は昨季の同時期と比べ54%増だ。今季の1試合平均約1・35盗塁と、この10年間でも最も多い。

ただしMLBでは今季からけん制の回数制限も導入されており、打者1人の打席の間に投手がけん制できるのは2度まで。その後は一塁走者が大きなリードを取りやすくなり、CBSスポーツ電子版は「盗塁増はけん制制限が第1要因だろう」と指摘している。

それでも塁間が短くなりベースが大きくなったことで、タッチを避けやすくなり、盗塁成功率に影響を与えている可能性はありそうだ。実際、4月末までの開幕約1カ月の盗塁成功率は約79・3%。昨季の成功率約75・4%と比べ、やはり上がっている。【水次祥子】

◆けん制の回数制限 今季から導入された投球時間を制限するルール「ピッチクロック」の中のひとつで、制限なく行えるのは2度まで。3度目でアウトにできなければ、走者には進塁が与えられる。