今年のドラフトを「田村の目」で占う。甲子園取材を重ねるなどアマチュア選手の素質を探ってきた田村藤夫氏(63)。高校生に続き2回目は大学・社会人の指名候補選手について現状の評価を聞いた。

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今年の大学生は非常にいい投手がそろっているとよく耳にしていた。そこでいくつかの映像を見て、確かにレベルは高いという印象を受けた。

青学大・常広羽也斗
青学大・常広羽也斗

まず、右腕では青学大の常広羽也斗(大分舞鶴)、左腕では東洋大の細野晴希(東亜学園)のボールに強さを感じた。常広は真っすぐの質がいい。私たちの中では、糸を引くようなボールの軌跡が感じられる時に「ラインが出ている」と表現するが、常広の右打者の外角球と内角球にラインが出ていると感じる。

東洋大・細野晴希
東洋大・細野晴希

左腕細野はアマチュア球界の左腕としては最速158キロをマークして話題を集めている。球種が豊富で、真っすぐの力もあり、これは素材としてはかなり高いのではないか。その他、青学大の下村海翔(九州国際大付)も常広と互角と言えるほどの球威を持ち、こちらも評価も高いだろう。

青学大・下村海翔
青学大・下村海翔

中大の西舘勇陽(花巻東)はいいカーブを投げる。いわゆるスピードがあって曲がりが大きいパワーカーブで、チェックした映像では左打者の膝元に決まっており、あの精度で投げられれば、かなり面白い存在になりそうだ。

中大・西舘勇陽
中大・西舘勇陽

私が注目する捕手は上武大の進藤勇也(筑陽学園)が光る。何よりも捕球してからの動きが速い。映像を見ながらストップウオッチで計測したところ、驚きの1・79秒(一般的に1・95秒が合格ライン)。あまりのタイムに計測し直したが、それでも1・82秒。今のプロでも1・8秒台は、ソフトバンクの甲斐くらいしか思い浮かばない。

上武大・進藤勇也
上武大・進藤勇也

野手では明大・上田希由翔(きゅうと)内野手(愛知産大三河)には広角に打てるリストの柔らかさがある。慶大の広瀬隆太内野手(慶応)は飛距離がある。打ち終わりの姿が誰かに似ていると考えていたが、広島の新井監督を連想させる。神宮でバックスクリーンに入れ、さらに右翼にも運んでいる。

明大・上田希由翔
明大・上田希由翔
慶大・広瀬隆太
慶大・広瀬隆太

社会人ではENEOS・度会隆輝外野手(21=横浜)が目にとまった。社会人出身の外野手は相当打力がないとレギュラー争いは厳しいが、度会は左打者で広角に打て、足も速い。

ENEOS・度会隆輝
ENEOS・度会隆輝

もちろんどの球団が指名するかによるが、プロの投手のボールに慣れ、粘り強く出塁して行けば、チャンスは出てくるだろう。投手ではトヨタ自動車の松本健吾投手(24=亜大)か。真っすぐは魅力で、スタミナもありそうだ。

トヨタ自動車・松本健吾
トヨタ自動車・松本健吾

今年のドラフト会議は、大学生投手に上位候補の逸材が多く、各球団の思惑が入り乱れることが予想される。各球団とも補強の優先順位は投手となりそうだが、駆け引きが白熱しそうだ。高校生左腕・前田悠伍(大阪桐蔭)の一本釣りも可能性はありそうだ。(日刊スポーツ評論家)