セ・リーグ首位の阪神。リードオフマンの近本光司外野手(28)が、文字通り打線をけん引している。ここまで1番中堅でフル出場。打率は3割には届いていないものの、出塁率ではキャリアハイの数字をマーク。ここまでの40四球は、6月にして自己最多の41四球に迫る数字だ。昨季までは「三振>四球」だった近本が、三振より多い数の四球を選んでいる。(成績はすべて20日現在)

【イラスト】阪神近本の年度別打率・出塁率
【イラスト】阪神近本の年度別打率・出塁率

四球増の要因はアプローチの変化にありそうだ。年度別のスイング率を見ると、昨季まではNPB平均(46・0%前後)を上回る数字だったのが、今季は一気に下がって33・3%。積極的に振っていた昨季までとは違い、かなり慎重になっている。33・3%は、規定打席以上の選手では12球団で最も低い数字(次いで低いのがソフトバンク近藤の36・1%)。積極的なバッターが、最も振らないバッターに変わった。

【イラスト】阪神近本の年度別スイング率
【イラスト】阪神近本の年度別スイング率

振らないことで2ストライクに追い込まれやすくもなるが、今季はその場面を苦にしていない。2ストライク時の打率は3割1分2厘で、むしろ追い込まれる前(2割6分3厘)よりも良い。出塁率3割9分3厘も12球団トップ(2位はDeNA関根の3割8分4厘)の好成績だ。出塁率は単純に塁に出た割合を表すが、アウトにならなかった割合とも言い換えられる。ボール球を見極めつつ、追い込まれても簡単にアウトにならない。リードオフマンとして理想的なスタイルになっている。

【イラスト】阪神近本の2ストライク時打率・出塁率
【イラスト】阪神近本の2ストライク時打率・出塁率

ちなみに、同僚の2番中野にも同様の変化が見られる。中野のスイング率は1年目から45・5%→46・2%だったのが、今季は37・2%。近本同様に四球が増え、31四球はすでに自己最多だ。近本だけが変わったというより、チーム全体として慎重に四球も選んでいこうという姿勢がうかがえる。打率だけでは分からない変化は、優勝を目指すチームにとって今後もカギになるだろう。【多田周平】