毎年ゴールデンウイーク(GW)の期間、九州の「へそ」に球児が集結する。1994年(平6)から鳥栖の元監督、平野国隆(13年、66歳で死去)を発起人としてスタートした交流試合大会「クロスロードin鳥栖」は今年で25年目を迎えた。地理的に九州の中心となる鳥栖市周辺で、九州の高校野球発展を狙って開催。最大140校が参加したこともある一大イベントが、九州全体のレベルアップにもつながった。

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 今年の5月3日、鳥栖商グラウンドで同校が大分雄城台と練習試合を行った。今年で25年目となる「クロスロードin鳥栖」の一環として開催。午前中に2試合、午後には長崎・鹿町工とも2試合こなした。今年の参加校数は約80校。94年にスタートした時は16校だった。13年12月に他界した平野が九州の高校野球の強化を狙って発起人となって継続してきた。平野が亡くなった後は、教え子でもある54歳の鳥栖商監督、園田元紀がこの交流大会の事務局を務めている。

 園田 平野さんの遺志をしっかり継ごうと思ってやっています。県外からも多くのチームが参加するので、普段触れることのない野球の質を味わうことができる。選手にとってもいい機会だし、我々指導者としてもさまざまな指導者と交流ができる。平野さんはそこに大きな意味を感じていたと思います。

 沖縄水産の元監督、栽弘義(07年、65歳で死去)が九州大会で沖縄から遠征にきた時、鳥栖にしばらく滞在し各県の高校と練習試合を行ってきた。平野がこれを大会として広めた。

 園田 大変なのは組み合わせを決めること。パソコンに詳しい人に頼んで自動的に組めるソフトを作ってくれと頼んだ。そのうち、沖縄、大分、宮崎県の自治体の方が視察に来てソフトをそのまま持って行くくらいでした。

 5月3日からの連休期間に、球場、学校グラウンドなどで1チーム2試合以上をこなす。九州各県はもちろんだが、広島、四国、今年は愛知の至学館も参加している。

 鳥栖市周辺に球児が集まるため、プロの卵を発掘しようとするスカウトにとっても「渡りに船」。12球団のスカウトから、毎年組み合わせを取り寄せる問い合わせがあるという。

 園田 最近ではスカウトへファクスしたりします。今年はあまり有望選手がいないのか3球団だけでしたが…。

 通称「鳥栖リーグ」とも呼ばれる。長崎、大分などにも同様のリーグができた。平野の遺志は九州全域に広がっている。

 園田 九州の盛んな交流という当初の役割は終わった。もう個々に連絡取り合って練習試合をしているところもありますから。なかなか私立強豪チームと試合をする機会がない公立校にすれば貴重な交流大会。その意味合いはなくしたくないです。

 平野チルドレンの1人、園田は鳥栖高校時代でも部長として監督の平野と7年もコンビを組んだ。恩師の残したレガシーはさらなる伝統を加え、引き継がれていく。(敬称略)【浦田由紀夫】

 ◆佐賀の夏甲子園 通算38勝57敗1分け。優勝2回、準V0回。最多出場=佐賀商15回。