大分には「甲子園」がある。18年前から、夏の選手権大分大会の会場は「別大興産スタジアム」1会場で開催されている。「最後の夏は県でもメイン会場で」との加盟校の希望もあっての結果だが、大分県なりの事情と取り組みも重なって県の「聖地」となっている。

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 JR大分駅から車で約15分。住宅地の中に大分県高校野球の聖地がある。昔は新大分球場と呼ばれていたが、ネーミングライツにより「別大興産スタジアム」となっている。ひときわ大きい柱の上に照明が輝く景色もひとつの特徴となっている。この球場のみで夏の大分大会が行われたのは18年前から。昨夏だけなら全国では鳥取(25校)徳島(31校)奈良(40校)和歌山(39校)と大分の5県だが、参加校数では大分が45校と一番多かった。今年は44校参加で1日平均3試合が行われ、7月7日に開幕し同24日に決勝が行われる予定だ。全国的に見ても珍しい。大分県高野連理事長・佐藤直樹(51)は説明する。

 佐藤 「大分の甲子園」として別大興産スタジアムを意識するようにしてます。別の会場を使用していたころに決勝が行われるメイン会場でない場所で、球児の最後の夏が終わることに生徒が少しかわいそうだという声もあったんです。

 春日浦野球場を使用していたが中堅まで100メートルしかなく、施設も老朽化していた。思い切って1会場にカジを切った。その後、ネーミングライツなどにより、球場もバージョンアップしてきた。スコアボードも電光掲示板となり選手の名前がすべて映し出される。

 佐藤 選手にとっても親にとってもいい思い出ですからね。それに1会場だと、何かアクシデントが起きたときに備え、2カ所に分散していたらその分、人員の確保が必要となる。1カ所ならその心配がない。さらに1カ所開催は夏だけで、春と秋は2会場で行う。夏だけのスペシャルなんです。

 日程の確保、チームの移動などの問題はあるが、近年の道路事情の改善に伴い、最も遠くてもバスで1時間半くらいで済むという。別大興産側も5月にネーミングライツの契約を更新した。

 高野連では制服を着て、学生証を提示すれば、自校の応援は無料になる取り組みをしている。また中学生以下の観戦も無料になっている。

 佐藤 実は野球どころといわれている大分県でも野球人口は減っている。小さいころから高校野球に触れてもらいたいし、もちろん自校の応援にも足を運んでほしい。中学校の大会でも部員が少なくて合同チームで参加しているのが現状なんです。

 18年前の当初は50校以上参加があり、1日4試合が通常だったが、甲子園本大会とほぼ同等の44校となり運営も少し楽になった。まさに「大分の甲子園」。全国でも珍しい取り組みは、100回大会ではもちろんのこと、大分の伝統としても来年以降も行われることだろう。(敬称略)【浦田由紀夫】

 ◆大分の夏甲子園 通算58勝68敗。優勝1回、準V0回。最多出場=大分商15回。

大分大会が開催される別大興産スタジアムの外野(撮影・浦田由紀夫)
大分大会が開催される別大興産スタジアムの外野(撮影・浦田由紀夫)