近本は再びミスターとしのぎを削れるか? 大げさに言えばそういう話です。

阪神の18年ドラフト1位ルーキー・近本光司はすっかりチームの顔になりました。1年目の19年シーズンの活躍は光りました。期待された俊足、そして盗塁はもちろんですが驚かされたのはその打撃でした。

シーズン序盤から1番打者で起用されるとガンガン安打を放ち、新人の安打記録で注目され始めました。結局、159安打を放ち、阪神の記録どころかプロ野球記録でも3位にまでランキングされることになったのは記憶に新しいところです。

特に注目されたのはミスターこと長嶋茂雄(153本)を抜いたことでしょう。まさか、そんな名前が出てくるとは思いませんから、本人はもちろん、我々、取材する立場の人間もドキドキしていました。

そんなとき、先輩が面白い資料を送ってくれました。それは長嶋氏が新人王を獲得した1958年(昭33)10月10日付の日刊スポーツでした。

1面で最高殊勲選手(MVP)を報じる中、長嶋氏が新人王を獲得したことも載っています。面白いのは得票数です。ご存じのようにMVPやベストナイン、そして新人王が取材に携わる記者投票で決まります。

この年の票数は全体で153票。長嶋氏は満票を獲得したのですが、その数が安打数と同じという、いかにもミスターらしい偶然も起こっています。

そして近本です。ハッキリ言って新人王のライバルはヤクルトの若き本塁打打者・村上宗隆でしょう。高卒で入団2年目の今季、36本塁打を放ち、一気にブレークしました。

当然、票は割れます。新人王になるかどうか以前にミスターのように近本が満票を獲得するのは無理です。今年の記者による有効投票数は310前後とみられます。安打数と同じ「159」を獲得できれば新人王になりますが、できなくても153票以上を取れるかどうか、という興味はあります。

1年目のシーズン、CSを終え、息つく間もなく参加している高知・安芸での秋季キャンプに参加している近本に、そんな話を聞いてみました。

「う~ん。新人王のタイトルを取るのは難しいと思っていますよ。村上くんで決まりだと思います。でもそういう話であれば、確かにどれだけ票がいただけるのか、は面白いかもしれませんね。どちらにしてもそういうところで名前が出るだけでありがたいですよ」

ハッキリするのは今月26日に開催される「NPBアワーズ2019」。どういう結果になっても近本の値打ちに代わりがないのは言うまでもありません。