「イチローの名付け親」がひと安心です。この日、懐かしい名前がネットニュースに上がりました。

「笑わない男」として知られるラグビー日本代表の主力・稲垣啓太選手(31=埼玉パナソニックワイルドナイツ)が結婚を発表。お相手はモデルの新井貴子さん(31)です。

海外でも活動する貴子さんはオリックス、広島、ソフトバンクなどで打撃コーチを務めた新井宏昌氏(69=野球評論家)の三女としても知られます。

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新井氏は近鉄、南海などで好打者として活躍。通算2038安打の名球会メンバーです。そんな新井氏が指導者として一気に注目されたのは94年のことでした。

この年、オリックス監督に仰木彬氏が就任。仰木氏を師事する新井氏も打撃コーチとして加わりました。そこでイチロー氏の打撃センスに触れ、驚いたと言います。

「鈴木一朗という男、タダモノではない」。そう思って仰木氏に1軍での起用を進言。新井氏の眼力を信頼する同氏もすぐ同意したのですが、同時に新井氏が付け加えたのはこういうことでした。

「球界には“鈴木”という選手は多くいます。ここは思い切って目立つ登録名にすれば。みんなイチローと呼んでいるし、そのままでいいのではないですか」

そのアイデアを仰木氏が即採用。若いイチローに負担がかからないように当時、チームで人気のあった佐藤和弘氏も「パンチ」と改名するなど念入りに売り出したのでした。

その後のイチロー氏の活躍は言うまでもありません。「イチロー」の歴史は、ここから始まったのです。

新井氏には当時から打撃、野球をよく教えてもらいました。個人的な話を許していただければ新井氏もこちらも三姉妹の父。すでに妻は他界しているという共通点もあります。

「これで3人とも嫁いでくれました。昔風に言えば親の責任を果たしたという感じがします。高原さんも分かるでしょう?」。新井氏はそう話してくれました。まさにその通りです。

稲垣選手とは昨年12月に行われた「野村克也さんをしのぶ会」に出席した際、東京で初めて会ったそう。

「構えることなく、気さくに話してくれましたね。でも少し緊張していたのかやはり笑ってはいませんでした。元々、表情が変わらないタイプでしょう」

新井氏もどちらかと言えばあまり感情を出さない方。それでも電話の向こうとはいえ、新井氏の喜びはしっかり伝わってきたのです。【編集委員・高原寿夫】

埼玉パナソニックワイルドナイツの稲垣啓太(左)とモデルの新井貴子
埼玉パナソニックワイルドナイツの稲垣啓太(左)とモデルの新井貴子