5月29日、日曜日。大阪梅田の場外馬券売り場は大興奮に包まれていた。日本ダービーでレジェンド武豊騎手が6度目のダービージョッキーに輝いた。現場ではなく、場外売り場が、これほど盛り上がるとは…。長い馬券人生で初めて見る光景だった。

50歳代での快挙に、我々高齢者、熟年世代は「見たか!」と叫びたくなったはず。年を重ね、円熟味を増し、ここ一番での大勝負。それをモノにするのだから、キャリアは伊達ではない。馬券はトリガミだったけど、気分は大もうけした感じ。ユタカよ、よくやった! 贈る言葉はこれしかない。

スマホを片手に、競馬とともに阪神のゲームを追う。不謹慎? を許していただきたい。その阪神はロッテ戦、3連勝はならず、悔しい1点差負けに終わった。それでも勝ち越したことにホッとした。とにかく過去が過去だったから、こちらも何となくうれしくなった。

千葉でのロッテ戦は、嫌な思い出しか残っていなかった。代表的なのが2005年の日本シリーズ。岡田阪神は日本一への自信を持って挑んだのだが、ロッテの若い力に好き放題、やられた。今江、西岡らに打ち込まれ、1戦目の最後は濃霧コールドという世にも珍しい結末。そこから4連敗…。間違いなく千葉は鬼門になった。

こんなことも印象に残っている。2008年、先発投手の谷間で、岡田は思い切って鶴を起用した。ところがプロ初先発の鶴は舞い上がってしまい1死も取ることなく降板。それでも打線は反発し、結局9対10の大乱戦で1点差負け。これも千葉ならではのゲームだった。

今シーズンはといえば初戦、佐藤輝のホームランが9回表に出て勝ち、2戦目は青柳の好投で連勝。3連勝といきたかったが、まあ、よしとするか。

この3試合を振り返り、僕は2戦目に注目した。実はこのゲーム、阪神は大変珍しい記録を残していたのである。出場した選手にカタカナ表記がなかったのだ。外国人選手抜きで勝った。他の11球団を見ると、すべてが外国人野手、もしくは投手が出場しており、阪神の純正チーム構成が、際立って見えたのだ。

マルテが故障、ロハスが2軍。投手も青柳が9回2死まで投げ、外国人に頼ることはなかったのだが、この勝利は改めて、チームの理想の形と考えていいのではないか。

かつて、そういうチームがあった。1986年の広島カープがそれで、外国人不在でリーグ優勝を飾っている。これほど極端なことは望まないが、阪神もそういうチームに近づいていけば…と、願っている。

期待していた野手の新外国人はどうやら獲得する気はないのかもしれないが、あくまで外国人は助っ人。この意識を球団も現場も共有してもらいたい。要するに外国人は「主力」であっても、「主軸」ではない。軸はあくまで日本人。これを投打に作る。これが強くなる条件といえる。

阪神にはその軸ができた。今回のロッテ戦が証明している。攻撃の軸は佐藤輝。あの9回の決勝ホームランこそ、軸としての証しだ。そして投手陣の軸は青柳。彼の男を感じさせるピッチングこそ、軸としての気概。タイガースに投打の2本の柱が確立した。これで戦っていけばいい。

確かに投手陣ではガンケル、ウィルカーソン、アルカンタラと、いい働きをしている。でも軸に考えることなく、打線も外国人不在を嘆くことなく、ようやく出来上がった軸を中心とした戦いで、苦境に立ち向かってほしい。

話を戻すが、競馬界でもルメールやレーンが席巻しているけど、武豊はこの流れを食い止めた。ただ単にダービーに勝っただけでなく、外国人ジョッキーに好きにさせないおとこ気。これを簡単にやってのけ、それでもさわやかに、クールに余韻を残した騎乗にファンはシビれる。

交流戦を流れが変わるキッカケに…と以前に書いたが、戦い方としては、その可能性が十分にある。佐藤輝、青柳を軸に、しっかりした戦いを。準備は整ったはずだ。(敬称略)