プロ野球は半分近くを消化し、まもなく折り返しを迎える。前半戦、いろいろあったけど、これも球界異変とされるのが個人記録についてだ。

スポーツ紙に日々掲載される打撃30傑、投手15傑の記録表。昔からこれを見るのが楽しみで仕方なかった。今シーズンも日刊スポーツでしっかりとチェックしているが、そこには強烈な数字が並んでいる。まず野手編だが、セパともに3割バッターが少ない。セ・リーグでは6月19日終了時点で2人だけ。DeNAの牧は3割をキープしていたが、同日の阪神戦でノーヒット。ついに3割を切り、同じチームの佐野と巨人の吉川の2人になった。

パ・リーグはというと日本ハムの松本剛とソフトバンクの今宮は安泰。そこに日本ハムの野村が3割に乗せ、こちらは3人となった。3割打者が両リーグ合わせて5人という異常事態。50年近くプロ野球の取材をしてきたが、こういう珍事? は初めてではないかと思う。

2リーグ分立後、セ・リーグの首位打者で最低打率の獲得となったのは1962年、広島の森永勝也。この時、長嶋茂雄の4年連続首位打者を阻止したもので、打率は.307。これが今なお残るリーグの最低打率の首位打者である。

パ・リーグは、というと1976年の太平洋の吉岡悟が.309でタイトルを獲得している。当時、僕は駆け出し記者で南海ホークスを担当。首位打者のチャンスがあった藤原満、門田博光の悔しそうな顔を覚えている。

まあ佐野や松本剛、今宮が3割3分以上をキープしているから、最低打率の首位打者更新はないだろうけど、ここまで3割打者が少ないのは異常なんだろう。

ということは、逆の現象が起きている。先発投手陣の防御率が素晴らしくいいのだ。セ・リーグでは青柳、西勇の阪神勢が1点台。2点台も現状4人いる。この上をいくのがパ・リーグで、6月19日現在、1点台の防御率は5投手。2点台が8投手と、まさに投手天国、打者地獄、クッキリと色分けされている。

よく「投高打低」と表現される状態だが、そうなるとチームが勝つには、低い打撃を上げていけば、勝ちに反映されるわけである。それをモロに出しているのがヤクルト。とにかくすさまじいバッティングで連勝を伸ばし、独走状態。これを追うのが巨人ではなく阪神だ。大山の神がかった打撃に引っ張られ、チームとして「打ち勝つ」ことができるようになった。これが反撃の最大要因といえる。

そういう意味で、6月19日のDeNA戦で連勝が止まったのは痛かった。簡単に逆転し、同点になっても、打ち勝つ空気は充満していた。8回表に3点を勝ち越されても、いまの打線なら、まだわからないとみていたら、8回裏、代打高山がヒットで出た。この反発力がいい。つないでいけば、佐藤輝、大山に回せば…と期待した矢先、監督の矢野は代打にロハスを送った。手ごまも少なかったけど、ここでロハスはまさかの3球三振。いいかげんにしろ! 何をしに出てきたんや! とめったに興奮しない僕も、あきれはてた。

何度か1軍と2軍を行き来し、1軍ではダメでも2軍では結果を残す。だから、また推薦があって1軍に。これって2軍では打てても、1軍ではからっきしということだ。そんな外国人に、なかなか見切りをつけないでいる。高い条件で獲得したから、現場は球団に気を使っているのか。ようやく新外国人獲得内定のニュースが入ってきたが、ここまでが本当に長すぎた。

この日の3球三振でわかったはず。一気に乗っていける状況で、3点差くらいなら、何とかできるという雰囲気を、たったひとりでつぶしてしまった。さすがに僕も、この三振で「今日は負け」と覚悟した。

先に書いたように、全体に投手力が上回る状況下、それを覆す力があるのはセではヤクルトと阪神。そう考えてもいいだろう。阪神にはまだ勢いを伸ばす打撃力が備わり、伸びている。だから外国人ではなく(新外国人候補のロドリゲスには期待するが)、2軍でお呼びがかかるのを待つ若手、中堅にチャンスを与える方が有意義なはず。今こそチームがひとつになって、結果を貪欲に求めていかねばならない。(敬称略)【内匠宏幸】 (ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「かわいさ余って」)

阪神対DeNA 2回裏阪神1死一、二塁、糸井は右前打を放つ(撮影・上山淳一)
阪神対DeNA 2回裏阪神1死一、二塁、糸井は右前打を放つ(撮影・上山淳一)
阪神対DeNA 7回裏阪神1死、近本は中前打を放つ(撮影・前岡正明)
阪神対DeNA 7回裏阪神1死、近本は中前打を放つ(撮影・前岡正明)