テレビの視聴率が表すように、WBCは最高の盛り上がりだ。16日は準々決勝のイタリア戦。大谷翔平の先発で興奮度は上がる一方で、ここを勝ち抜いて、世界一に前進してほしい。

振り返ると、ここまでの1次ラウンドの4試合。強力投手陣は想定通りの実力を示した。攻撃陣も大谷、ヌートバー、吉田の活躍はさすがメジャーと納得できるもの。そんな中、多くのファン、評論家が高く評価しているのが2番打者。近藤健介である。

FAを行使して昨オフに日本ハムからソフトバンクに移籍したのだが、さすが高待遇で移っただけのことはある。まさに職人、玄人受けするプレーヤーとして、全国的にさらに認知された。

阪神ばかり取材してきたから、パの選手に関して、情報量は少なかった。好打者として、その名はとどろいていたが、実際にこの大舞台での彼のバッティングを見て、真の実力者であることがわかった。

1993年生まれで、今年の8月(9日)に30歳を迎える。横浜高校からドラフト4位で日本ハムに入団し、プロ12年目を迎えるが、通算1000試合を超える(1014試合)出場で、通算打率が3割7厘。これはすごい。さらに注目するのは、その出塁率の高さで、2019年、2020年と最高出塁率のタイトルを獲得している。

派手さはないが、仕事人そのものの働きは、WBCでも際立っている。2番打者とはこうあるべき…という形を持ち、1番ヌートバーを生かし、3番大谷につなぐ。侍ジャパンの得点力のキーマンになっている。

彼の打席はシンプルである。ストライクかボールかの見極めの能力にたけ、相手投手に多くの球を投げさせる。見切った末、甘い球がきたらガツンといく。広角にヒットを放ち、力を込めればホームランも打てる。四球を多く取れ、ヒットを放ち、出塁率が高いのもうなずける。

自分の役割、仕事を理解して、2番という打順の理想型を作っている近藤だ。いかに2番が重要なポジションであるかを、今回のWBCで再認識することになった。

さて、やはり話を阪神に移す。今シーズンのトラの2番は中野。これは岡田の中では決めている。中野が近藤のような仕事人になれるのか。ここも「アレ」への大きなテーマといえる。

過去を思い出してみる。1985年の日本一のシーズンは1番真弓で2番は北村、弘田だった。彼らがバース、掛布、岡田のクリーンアップにつないだわけだが、特にベテラン弘田の小技、テクニックは印象に残っている。

2003年のリーグ優勝時、星野仙一は1番今岡という超攻撃型を進め、2番に赤星を据えた。小細工の効いた赤星の2番はハマったし、この1、2番を起点に爆発的な攻撃力が生まれた。

2005年、岡田はオーソドックスな形に戻した。1番赤星でいき、2番に関本、そして鳥谷を起用。足を絡めた機動力を押し出し、リーグ優勝を手繰り寄せた。

もちろんどの打順も重要なのだが、いきなりの攻撃で主導権を奪う1、2番の働きは大きい。今シーズンは2005年型の打順を岡田は描いている。近本は赤星のように出塁率を高め、盗塁でペースを握る。そこで2番となる。中野がどういう2番になるのか。そこが大きなポイントと指摘する評論家は多い。

正直、昨年までの中野は淡泊な感じがしてならなかった。言葉が適切かどうかはわからないが、どうも雑な打撃が目についた、と思っていた。入団してから、ずっと2番を打ち続けているわりに、まだ2番になり切っていない。そういう印象を受けていた。

前回は中野の守備について書いたが、今回は得意分野の打撃力。その目の前で見る近藤の存在感…。見習うべき点は多い。近本がさらに出塁率を上げ、2番中野が状況に応じての対応ができるかどうか。2番打者の極意を、WBCの間に身につけてほしいものである。【内匠宏幸】(敬称略)