昨年の末だった。すでに岡田彰布は阪神の監督復帰が決まっていた。それをわかった上で「もし評論家のままだったら、順位予想はどうなる?」と聞いた。
「いまは違うよ。そら阪神が1位やけど、評論家やったら、DeNAにしてたと思うわ」。数年前から岡田のDeNA評は高かった。「打線がエエ。どこからでも得点できるし。あとは投手陣よ。故障者が多いし、それがそろえば、そら強いやろ」。
そのDeNAの足音が聞こえてきた。阪神は交流戦を終え、リーグ首位に立つが、2位DeNAとの差は2ゲーム(6月18日終了時)。半年前の岡田の予想通り、DeNAが存分に力を発揮している。
原動力はもちろん攻撃力だが、その中でも宮崎の存在は際立っている。長く打率4割をキープ。そこからは落ちたが、それでも3割7分台と断トツの首位打者。本塁打も打ち、打点も稼ぐ。牧が4番でその前後を打つ宮崎は好不調の波がない打者である。
さらに目を引くのが「16」(6月18日現在)という数字。これは宮崎の三振数である。とにかく三振しない。三振が少ない。バットに当てる技術に秀でているから、何かが起こる。三振では何も起きないが、バットにさえ当たれば、何かが生まれる。それを宮崎は体現している。
同じように昨年、騒がれたのが吉田正尚だった。オリックスでの最後のシーズン。吉田の三振数は際立って少なかった。それはレッドソックスに移籍しても変わらず、メジャー1年目で高打率をキープしている。
バットに当てさえすれば…。常にそう思わせるのが阪神の佐藤輝だ。6月18日のソフトバンク戦。2四球はあったが、前半から中盤の先制機で連続三振。せっかく2年目の前川が無死で二塁打を放ったのに、大山、佐藤輝が倒れ、先制点を奪えなかった。これが大きく響き、負けゲームになった。
ここまで佐藤輝の喫した三振は「64」を数える。最も少ない宮崎の4倍。それだけバットに当たらないということだし、これでは何も起きない。
昨年の3冠王、ヤクルトの村上は佐藤輝の上をいく三振数だが、これはチーム事情も影響している。ホームランで流れを変えるということで、下位に沈むチームならでは現象ということだが、佐藤輝の場合はまったく当てはまらない。
もちろん彼のバットでチームは何度か救われたが、正直、逆の現象の方が多く出ている。ここで何とか…という場面での三振があまりにも多い。相手バッテリーもわかっていて、同じ配球、同じ球種で攻めてくるのに、それを克服できないで、ここまできている。
さらに佐藤輝は損なタイプに映る。三振したあとの振る舞いが、ファンから見れば不貞腐れたように感じ、メリハリのない動きに、いら立ちすら感じる、といった声を聞いた。本人はそういう気はないはず。情けなさや申し訳なさ。自分への腹立ちにあふれているに違いないが、それが表現できないタイプ。いわゆる「大物感」があるから、見え方も違ってくる。
ルーキー時はシーズン173三振。2年目の昨シーズンは137三振。激減したことに、成長の評価は上がったけど、今年は昨年を上回るペースで推移している。「だけど、バットを常に振れるのが佐藤輝の持ち味。だから三振は仕方なし」といった声もあったけど、もう3年目である。
このまま進めば、岡田も必然、起用法を考えるに違いない。ボール球を見極められない。ボールに手を出す悪癖に改善が見られないところに、佐藤輝の弱みがある。相手バッテリーは楽なもの。コースさえ間違わなければ、きわどいボール球さえ投げれば、振ってくる。佐藤輝を三振に取る術を、各球団は熟知しているわけだ。
大げさにいうと、佐藤輝にとってこれからが「大物になるか」、それとも「平凡な打者に終わるか」の重要な分岐点になる。三振にも中身があることを再認識すべきといえる。【内匠宏幸】
(敬称略)




