全セ対全パ 2回裏全セ1死、阪神佐藤輝は中二塁打を放つ(2023年7月19日撮影)
全セ対全パ 2回裏全セ1死、阪神佐藤輝は中二塁打を放つ(2023年7月19日撮影)

球宴の少し前、用事があって阪神監督の岡田彰布に電話した。そこで話題になったのがオールスターのこと。今回、久しぶりの球宴となる。

「そうやな。まあ年寄りやし、何もせんわ。若い人に任すから」と笑っていた。全セの監督がヤクルトの高津。彼は54歳。ちなみに岡田と同じ11月25日生まれ。コーチのDeNA・三浦は47歳。岡田とはひと回り以上も若い。現在の球界最年長監督、65歳の岡田がのんびりする…というのもわかる。

前回の監督時、球宴のベンチには落合博満がいて、原辰徳がいた。ペナントレースの延長で、お祭りでも駆け引きがあり、それはそれで楽しかったとか。

球宴といえば、いまから43年前。岡田はファン投票で選出された。迎えた第1戦。西宮球場だった。セ・リーグの先発、小林繁が3イニング投げ、4回表がきた。走者が2人出て、小林の打順。全セの監督、古葉竹識の「岡田、いくぞ」の声が響いた。それが岡田のオールスター初打席。マウンドには日本ハムの左腕エース、間柴。確か10何連勝かしていた好投手だったが、岡田は鮮烈の球宴デビューを果たす。「もう43年も前やで。カウントとか球種は忘れた」らしいが、打球方向は覚えていた。

センターバックスクリーンの右。「これは、いった…という感触やった」。逆転3ランだった。これでいきなりMVPになった。その時、僕は岡田を取材している。「ハイ、確かに自信になります!」。「おーん」とか「そらそうよ」は当時はなし。22歳の青年はハツラツとしていた。

阪神の新人・岡田彰布が球宴初打席初本塁打を放ちMVP獲得(1980年7月19日撮影)
阪神の新人・岡田彰布が球宴初打席初本塁打を放ちMVP獲得(1980年7月19日撮影)

「オールスターで結果を残す。それが自信につながり、後半戦が楽しみになる」。それを経験しているからこそ、今年、大量出場となる阪神の選手たちに期待を寄せる。

確かにそうだ。昔、南海ホークスの門田博光、藤原満が活躍した「グリーン旋風」。山本浩二、衣笠祥雄の「赤ヘル旋風」。それはシーズン後半に続いた。

7月19日、岡田が43年前に輝いた同じ日、佐藤輝が光った。オリックスの山本由伸から放った打球は、逆方向への大きな二塁打。さらに同じオリックスの山崎福から引っ張ってのヒット。この時、岡田はベンチでニコリともしなかったが、こんなバッティングができるやないか…と見ていたに違いない。

レフト方向に逆らわずに打てば、パワーで長打になる。もちろん甘いコースなら、引っ張ればいい。なぜかそれができなかったここまで。外の球でも強引に打ち、ひっかけての内野ゴロや空振り。相手バッテリーも攻め方がわかっている。いまのままでは、佐藤輝は怖くない打者で、攻め落とせるバッターになっていた。

これまで何度か書いたが、岡田は佐藤輝のことを「不思議な選手」と表現する。調子がいいのか、悪いのか。どうにもつかみどころのない打者という評価だ。そんな不思議ちゃんを返上する後半戦になってくれたら…。期待を持たせる2安打になればと祈る。

この第1戦で佐藤輝にはさらなるヒントがあったのでは。それは右打者の2本の本塁打だ。DeNA宮崎と日本ハム万波。彼らは逆方向、ライト方向にアーチをかけた。これは2本ともドンピシャのタイミングだった。タイミングさえあえば、逆方向にも大きいのが打てる。それを示した本塁打だった。

右と左との違いはあれど、ベースは同じ。要はタイミングだ。それがこれまで佐藤輝には欠けていた。タイミングが合わず、バットの出が遅れて差し込まれる。力ないファウルを何度見たことか。本人もわかっているはず。でも簡単に修正できないのも野球だし、あるキッカケで、自分のタイミングを見つけることもある。

岡田は「まだわからない」と素っ気ないが、この日の2安打にすがってみたい気がする。オールスターで何かが変わる。まだ望みはある。【内匠宏幸】

(敬称略)

全セ対全パ トラッキーの帽子をかぶる阪神佐藤輝(2023年7月19日撮影)
全セ対全パ トラッキーの帽子をかぶる阪神佐藤輝(2023年7月19日撮影)