もう足踏みはしない。優勝マジックが15に減った。ここからはとんとん拍子でいく。取材経験上、ここまでくれば、一気に進むと確信している(近本の状態が心配だけど)。
「そんなん、スポーツ新聞も内容より、勝った負けたの記事ばかりになるやろ」。監督の岡田彰布は笑う。その通り、中身より結果だ。またこう言う。「タイトルホルダーなしでのアレって書くやろ」。いやいや、タイトルは取れる。打者の主要3部門は無理だが、近本の盗塁王、村上の防御率とか、可能性は十分にある。
いよいよ景気のいい話題ばかりになってきたところで、僕が期待するのは「虎の新記録」なんです。それはシーズン終了後、記者投票で決まる「ゴールデングラブ賞」。果たして今シーズン。阪神から何人選ばれるか。これが楽しみでならない。
監督就任と同時に岡田は「守りの重要性」を説いた。ミス撲滅、失策を少なくする。相手にスキを見せない野球を…。これをテーマにした。ところがシーズン最終盤、阪神のチーム失策数は「71」を数える。これはいつの間にか、リーグ最多になっていた。でも、いまではこの数字に誰も関心を寄せない。「エッ、そんなに多いの?」という感覚。それはここまでのディフェンス力の強化が実現し、阪神の守りはよくなった、のイメージが定着したからだろう。
さてゴールデングラブだが、1972年以降、阪神から選ばれたのはシーズン4人が最高で過去3度あった。まず1985年の日本一シーズン。木戸、岡田、平田、掛布の4人だった。続いて1992年、優勝を最後まで争ったシーズンではパチョレック、和田、オマリー、亀山。そして2003年の優勝時。この時は矢野、アリアス、今岡、赤星が選ばれている。
となると今シーズンは過去を上回る数が選ばれる可能性が十分にあるとみる。まずは捕手。これまで梅野との併用だった坂本だが、梅野の離脱後は1人で守る。インサイドワークも含め、守りは間違いなくしっかりしているし、他球団を見渡せばライバルはいないように映る。巨人大城なら坂本。そうジャッジするのだが。
続いて一塁。ここは文句なしで大山。失策数は多いけど、それを上回る守りの数々。文句なしで選ばれるはずだ。さて問題は二塁である。ここには絶対王者がいる。広島の菊池なのだが、この牙城を崩しにかかるのが中野というわけ。コンバート1年目、中野の守備の進化は強烈だった。何度もチームを救ったが菊池もすさまじい。失策数は中野が菊池の倍以上記録しているが、インパクト、印象という点においては中野が選ばれても不思議でない。
遊撃は木浪がいる。中野との二遊間コンビは阪神の売りでもあり、ライバルも見当たらない。ただ中日の龍空の評価が意外と高いのが気になるが…。
三塁は無理だろう。佐藤輝の守りはまだまだ不安定。ここは来年に期待ということで、外野は近本が鉄板。3年連続の受賞は確実だろう。あとはノイジーか。外国人選手が守備で、それも外野手として高い評価を受けるのも珍しいけど、どうだろうか。他球団の外野手との比較になるけど、望みは薄い?
ここまでで当選候補は5人。そこに加えて投手だが、村上はどうだろう。投球同様、守備力にセンスを感じる。自ら崩れることもなく、投手も内野手のひとり、というなら、十分に役目をこなしている。
9個のポジションで最大6ポジションでゴールデングラブ賞が。そうなれば阪神球団史上最多となり、「アレ」が一層、価値あるものになる。アレが近づいてくると、いろいろな楽しみ方が出てくる。【内匠宏幸】
(敬称略)




