年末年始、やることがまったくなかった。ということは、時間をつぶすのはテレビ。画面の前にずっと座りっぱなしだった。

どこの局も「阪神特集」を放送していた。リーグ優勝に38年ぶりの日本一。関西ではまだまだ余韻が…。となれば視聴率は取れる。僕も見入っていた。特にこれでもか、というくらい阪神特化の番組を放送したサンテレビ。まんまと思惑にはまり、長時間、くぎ付けになった自分がいた。

番組内で放送されたところで、気になるシーンが。ハワイへの旅行中、ひとりジムで、ビーチでトレーニングに励む投手が紹介されていた。それが才木だった。聞けば、非常にストイックなタイプで、黙々とトレーニングする姿をよく目撃されている。

高校からプロに入団した頃、きゃしゃな体つきで、まずは体作りからと思わせた若者は、いまでは本当にたくましくなっている。上半身から下半身。本当に太くなっているし、そこに無駄なものがない。問題の右ひじは手術後、再発することなく、リハビリで立て直し、2023年、そう昨年は8勝(5敗)、防御率は1・82。ローテーションをつかみ取った。

この才木が2024年シーズンの「エース候補」で「チーム勝ち頭」では、といまから予想している。村上、大竹、伊藤将、青柳、西勇など実力派がそろうスタッフ。そこでエースの称号はなかなか難しいが、後押しする証言が身近なところからあった。

それは昨年の夏。球界がオールスターウイークの時。全セのコーチでベンチに入っていた阪神監督の岡田。試合前に休憩スペースでのんびりしていた。そこに居合わせたのがDeNAの東だった。最多勝になった東に対し、岡田は「ホンマ、ええ球、投げるよな。いま球界でNO・1やな」と本音で絶賛。恐縮する東の横にいたのが、巨人の岡本和と中田翔だった。岡田と東のやりとりを聞いていた2人。岡本がこんなふうに言ったとか。「阪神にいるじゃないですか。才木のフォーク。あれは絶対に打てません」。中田翔もうなずきながら「あれはエグい」と口にしたとか。

これを聞いて、岡田は当然、ニンマリする。他球団の選手の評価。これは正直なところ、ヨイショの部分もある。でもこのオールスターの中のあくまで個人的な集まりで出た発言。岡田は素直に耳に入れた。

こんな隠されたエピソードが好きだし、これから先の興味につながる。才木はシーズン前、侍ジャパンとの強化試合で、大谷に衝撃の1発を食らい、そこからスタートした2023年だった。あのホームランをバネにして、規定投球回には届かなかったものの、ローテーションを守った。

昨年9月14日、甲子園での巨人戦。18年ぶりのリーグ優勝がかかるゲームを、岡田は才木に任せた。そして巨人打線を力で抑え込んだ。胴上げ投手は岩崎に譲ったが、才木の気迫のピッチングは本当に見事だった。2023年の経験が生きる。ハワイでのトレーニングでわかるように、才木には浮ついたところがないようだ。岡田もそれを認めている。

右の本格派。三振を取れる投手。アクシデントさえなければ、トラのエースに躍り出てもいい。期待は膨らむばかりだ。【内匠宏幸】(敬称略)