ポカポカの陽気に、多くのファンの来場。沖縄キャンプは第2クール終了まで、それは順調な歩みだった。天候に恵まれ、スタンドの空気もよし。選手もその気で練習に励む。ここまでは何の不満もなく…といったところか。監督の岡田彰布の口から不満やグチは飛び出さない。現場で取材する日刊スポーツのトラ番に聞くと「機嫌はいいです。取材時間を多くとってもらい、穏やかな会見が続いています」とのことだった。

だが、待てよ。そんな状態がいつまでも続くとは思えない。岡田との長い付き合い、近いうちに必ず爆発するから…と、若いトラ番に伝えておいた。

何もかもがうまくいき過ぎている。それは知らず知らずに「緩み」になって表れる。岡田のセンサーが作動した。持ち前の危機管理能力。2月11日の紅白戦終了後にガツンときた。スポーツ紙的見出しは「岡田監督、怒ッカン!」となる。

結果を残せなかった湯浅の動きに始まり、出るわ、出るわの怒りのオンパレード。それは選手だけにとどまらない。コーチ陣にも容赦ない言葉が続いた。

これを読み、聞き、いかにも岡田らしいと感じた。選手だけでなく、コーチにも言及する。他球団ではあまり見受けない現象である。監督がコーチのことについて、不満などを明らかにすることは、まずはない。それを岡田は何の忖度(そんたく)なしにやってしまう。

これを知り、コーチはもちろん選手もハッとする。怒りの原点はほとんど選手にあるが、コーチにもストレートに飛ぶ。緩みかけたムードがたちまちピリッとする。これも岡田の狙いであった。

紅白戦、岡田からサインは出ない。選手が考え、コーチも目的を持って、作戦を立てる。11日のゲームの場合、事前に岡田は走塁コーチに「走らせろ!」の指示を出していた。それを聞いていたはずなのに、絶好の場面でコーチはサインを出さなかった…ということだった。コーチボックスの藤本、田中には大いに不満が残った。俊足がウワサのルーキー福島が走者になったのに、試すことはなかった。

岡田はコーチには極めて厳しい監督だ。それはコーチの存在が非常に大きいからという考えがあるから。ましてキャンプは「コーチが主役」とまで言うほど、コーチ陣にはレベルの高いコーチングを常に求めている。それが昨年の日本一、そして今回の順調な沖縄キャンプで、緩みを察知。それが一気の「怒ッカン!」の背景だと推察する。

誰に聞いても、穏やかになったと評される昨今の岡田であるが、それは本人も自覚がある。「ホンマ、怒りを感じることが少なくなったもんな」と漏らしている。自ら「連覇」を口にして、周囲の評価、専門家の予想では連覇確実と位置付けられている。これを怖い…と感じた。連覇はそんなに簡単なものではない。チームに流れかけているいまの空気を止める。先にも書いた岡田センサーが激しく反応。今回の怒ッカンはまさに「歯止めの一撃」。そう読み取れる。【内匠宏幸】(敬称略)