ソフトバンク、阪神、中日で2軍バッテリーコーチを務めた日刊スポーツ評論家・田村藤夫氏(60)が、DeNA-ロッテ戦(横須賀)を取材。高卒プロ3年目の本格右腕阪口皓亮(こうすけ・20=北海)のピッチングにスケールの大きさと、1軍で活躍するための課題を見た。

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横須賀のスタジアムではファンの皆さんが観戦していて、私にとっては今年はじめてイースタン・リーグで観客がいる中での試合だった。率直に「野球だな」と思い、非常にうれしい気持ちになった。

密にならないようソーシャルディスタンスを保ってはいるが、やはりスタンドにお客さんがいると熱気がある。歓声はなくとも、スタンドにファンがいれば、選手の動きも変わってくる。活気を感じながら試合を見ていて、DeNA先発の阪口のピッチングが目にとまった。まず、いい真っすぐを投げるなあと、その球筋が印象に残った。

バックネット裏にはお客さんがいたので、スタンドの上部から見た。阪口の球筋をもっと近くで見れば、より詳しく分かったと思うが、私の位置から見えたのは、シュート回転せず、きれいな軌道を描くストレートという感じだった。この試合の最速は152キロ。常時146~8キロを投げていた。187センチ83キロ。手足が長く、すらっとした立ち姿から投げ下ろす。投げっぷりがいい。

ふと、西武黄金期を支えた剛球右腕・渡辺久信の躍動感がちらっと脳裏をかすめた。まだ、渡辺久信と比べるレベルにはないが、本格右腕というのは、投げっぷりがいいと絵になる。これからの阪口には、そういう見た目の華やかさという点でも期待が持てそうだと感じた。

肝心のピッチングでは追い込んでから苦労していた。6回113球を投げ、7安打6奪三振で失点2(自責0)。6奪三振のうち3三振がストレート、残る3三振はカーブ。カーブ、スライダー、カット、フォークを投げていたが、決め球がないという印象だ。カーブはちょっと腕の振りがゆるむように映った。

1-2と追い込みながら、ファウルを打たれ、ボールを見逃されてフルカウントという場面が目についた。7安打のうち5本は追い込んでから。うち4本はストレートを、残る1本はスライダーを打たれている。持ち球にフォークはあるが、浅く握っている感じでスプリットに近い印象を受けた。落差が出ず、スピードも130台後半。この試合ではゴロを打たせるボールになっていた。カットボールが138キロ前後だったため、カットボールとの球速差に変化がなかった。フォークは130~2キロくらいで、もっと落差が出れば、空振りも取れるようになる。そうなれば、ストレートとのコンビネーションでもっと楽に打ち取ることができるようになる。現状では決め球が課題だ。

1軍になると、阪口クラスのストレートは珍しくない。そして、しっかりした決め球がなければ、2打席目以降でどんどん捉えられてしまうだろう。常に1軍を意識しながら、投手有利のカウントからどう攻略していくのが自分のスタイルになるのか。ファームの実戦の中で見つけてもらいたい。(日刊スポーツ評論家)