<イースタンリーグ:日本ハム8-0巨人>◇7日◇鎌ケ谷

捕手として現役21年間で通算出場試合1527。引退後はコーチとして4球団で計21年間(うち1年間は編成担当)、合わせて42年間をプロ野球で生きてきた田村藤夫氏(61)が、巨人の新外国人選手、スコット・ハイネマン外野手(28=レッズ傘下3Aルイビル)の初実戦を分析した。

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シーズンの終盤に合わせて補強したからには、どんなバッティングをするか、結果はもとより内容に注目した。

初回、先発の日本ハム吉田はいつも通りに初回はストレートのみの投球だった。もちろんハイネマンはそんな事情はわからないだろうから、ストレートと変化球を頭に入れての打席だったと思う。

初回はカウント3-1から4球続けて外角ストレートをファウルしている。ファウル方向が右斜め後ろということから、吉田のストレートを捉えていないことがわかる。ボールの下にバットが入っている。バットが下から出ているためで、インパクトの瞬間にバットが下がるからファウルになる、そう感じた。

8球ストレートが続き、最後もストレート。146キロの真ん中高めのキレのあるボールに空振り三振だった。スタンドから見ていた私としては、変化球を頭に入れたスイングというよりも、ストレートに合わせたスイングでタイミングが遅れたと映った。

第2打席も吉田との対戦で、この打席では変化球が加わった。初球外角ストレートを空振り、2球目外角スライダーを見逃してボール、3球目外角ストレートを見逃してボール、4球目外角スライダーを見逃してボールでカウント3-1。2球目の外角スライダーを見逃した場面では、変化球への選球眼としてはまずまずの対応を感じた。

第1打席と同じカウント3-1から、5球目外角ストレートを空振りしている。バッティングカウントで、第1打席でも同じ状況で吉田の外角ストレートを仕留め損なっている。この打席でも同じく外角ストレートを捉えられなかった。6球目は外角ストレートがファウル。7球目が真ん中低めのフォークで空振り三振だった。

一般的に、外国人選手に対しては、インコースのストレートと低めの変化球で打ち取るパターンが多い。まだ、最初の試合で、軽々にハイネマンのバッティングを評価することはしたくないが、もしかすると、ストレートで追い込んで低めの変化球を見極めることが、ハイネマンの課題になる可能性はありそうだ。

第3打席も吉田との対戦で、初球スライダーをレフトフライだった。ここは吉田の外角を狙ったスライダーが内側に抜けた半速球だった。ストレート待ちのところへ、半速球が甘く入った。ハイネマンとしては仕留めたいボールだったが、私の目にはボール1個分待てればホームランというスイングに見えた。もうちょっと待てたらという紙一重のスイング。バットの先っぽだったのは、ストレートのタイミングで振りに行っており、制球ミスの抜けたスライダーだったため、タイミングがわずかにズレた、非常に惜しい当たりだったと思う。

第4打席は左の福田との対戦で、初球外角ストレートがボール、2球目が外角ストレートをファウル、3球目が内角スライダーがボールでカウント2-1から、外角ストレートをライトフライ。逆風だったがフェンス際まで運んだ。少しずつではあるが、外角のストレートにタイミングが合いつつあるなと感じる打球だった。

この試合では内角ストレートは1球だけ。外国人選手には内角ストレートに弱点を持つバッターが多い。ハイネマンが内角の速いボールにどう対応できるかで、評価が決まってくると感じる。この試合だけに限れば、まだ実戦のストレートに対応はできていない。タイミングとしてはそんなに大きく外されてはいないが、少しずつ刺し込まれているのは気になるところだ。

実戦を重ね、いろんな投手のストレートを見ていけば、ある程度の対応はできるだろう。後は低めの変化球の見極めと、内角ストレートをどう処理できるか。打席での構えは左足を開いてはいるが、オーソドックスなタイプと見た。もちろん、補強として巨人は獲得しているのだから、パワーも技術もあるという前提で、初実戦の内容をじっくり見させてもらった。ライトの守備では、守備力を測る打球が飛ばず、あまり参考にはならなかった。

この試合では日本ハムの先発吉田のストレートにキレがあり、素晴らしいボールを投げていた。初回はストレートのみのピッチング。コーチからは変化球も解禁されていた中で、自分の判断で、ストレートだけで3者連続空振り三振という見事なピッチング。初回から全力で、自分の持っている一番いいストレートを、出し惜しみせず投げ込む。見ていて気持ちのいいマウンドだった。(日刊スポーツ評論家)

外野の守備に就く巨人ハイネマン(撮影・小早川宗一郎)
外野の守備に就く巨人ハイネマン(撮影・小早川宗一郎)