<イースタンリーグ:日本ハム7-1ヤクルト>◇10日◇鎌ケ谷

日本ハム・宇佐見真吾捕手(30)のホームでのタッチプレーと暴投処理の甘さに、チームが抱える捕手事情が非常に気になった。

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1軍のチーム事情と、ファームの育成状況が密接に関連していることが、この日の試合で切実に理解できた。

1軍では8日の広島戦で、インプレー中に清水が一瞬、ミットを外した動きが影響し、走者の生還を許した。新庄監督は清水の2軍降格、梅林の昇格を決めた。

私はこのところファームでの試合を見ることが多かったのだが、梅林は捕手で出場しているのは限定的だった。私の感覚では清水の代わりに昇格するのは宇佐見が有力候補と思っていただけに、意外だった。

そんな背景があってのこの日の試合だった。宇佐見は4番捕手。第1打席はヤクルト先発高梨の初球インコース低めの真っすぐを右翼へ見事な先制2ラン。

昇格できなかった悔しさを晴らすよう、もしくはここからまずバッティングでアピールしてやる、という意地のようなものを感じた。自分が昇格してもおかしくないと感じていたはずだ。覇気がなくなることもなく、気持ちを込めたバッティングは光った。

となれば、肝心の捕手としてどんな動きを見せてくれるのかと、ひときわ集中して見ていたが、残念なプレーが目についた。

まず3回2死二塁、次打者に左前ヒットを許す。宇佐見はバックホームを待ち受ける態勢。ベースの前にポジションを取ったが、左翼阿部の返球が三塁ベンチ側にそれ、宇佐見は動いて正面でワンバウンドで捕球。

走者にタッチに行くが、私の目には動きが機敏には見えなかった。タッチしたのは走者の太もも付近だった。私は反射的にセーフかなと思った。しかし、判定はアウト。宇佐見からすれば幸運なワンプレーだった。

ラッキーだった、では済まされないなと感じた。これはプレーを見ていた私の意見だから、この日訪れていたファンの皆さんとは多少考えが違うかもしれない。そこは承知した上で指摘したい。

私が見た限りではセーフに見えた。それは、宇佐見が捕球してから追いタッチ気味に行った動きが緩いように感じたからだ。宇佐見の心情はわからない。わからないが、同じ捕手経験者として、半ばあきらめていたのではないかと、想像してしまう動きに映った。

これは見る人によってさまざまで、判定がアウトなのだからいいだろう、という意見も当然あると理解している。

しかし、こんな時だからこそ、宇佐見にはいつも以上に全力プレーを求めたかった。

心の緩みと言われても仕方のないミットを外すという1軍での清水のプレーがあった後だからこそ、ファームできっちりと全力で、ひたむきなプレーをしなければならない。

ここは、古巣だからこそ、同じ捕手だからこそ、厳しめに指摘しても決して言い過ぎではないと、私は信念を持って伝えたい。

本当に連鎖反応というものはプロ野球の世界にはよくある。外野手のダイレクトキャッチかワンバウンドかで際どいプレーは、続くこともある。タッチが先か、足が速いか、そういう場面も1試合の中で繰り返されることもある。

同様に、ホーム上での若干集中力を欠いたタッチプレーがあったなら、それが1軍と2軍の違いはあっても、強く戒めておかないと似た印象を与えかねない。

場面は変わって4回1死一塁。ここで松岡の左打者膝元へのカーブがワンバウンド。確かに止めるのは難しかった。それでも何とか体に当てて前に落としてほしいボールだった。

後ろにそれたボールはファウルグラウンドを転々とした。一塁走者は俊足ではなかった。むしろ、遅い部類だろう。その走者が二塁からさらに三塁を狙った。結果は宇佐見からの送球で三塁でタッチアウト。

ここでも、私は強い違和感を覚えた。アウトになったから良かったということではない。そもそも速くない走者が三塁を狙おうとしたこと自体が捕手は反省すべきポイントだ。

後ろにそらし、目いっぱいのプレーだったかもしれないが、三塁を奪えるかもしれないと思わせたところで、スキを与えている。

そこまで言うのは酷だ、というご意見もあるだろう。しかし、捕手はどんなに難しい変化球だろうが、瞬時に気持ちを切り替えて、絶対に二塁で走者をとどめておく動きを見せないといけない。

ずいぶんと厳しいことを言うが、古巣日本ハムの捕手陣が抱える脆弱(ぜいじゃく)さを考えた時、こうした指摘をしっかり受けとめてくれるチームだと信じたい。

送球がそれたところから、プロの捕手は何とかしてアウトにするために体を張る。ワンバウンドが後ろへ擦り抜けた瞬間に、「ああ」と天を見上げたい気持ちを押し殺して、全速力で転がるボールへチャージする。それが捕手の本業だ。

それが、どこかでちょっとしたスキがチーム内にあると、それは連鎖する。清水はこれから引退するまで2度とインプレー中にミットを外すことはないと信じたい。

同じように、宇佐見にも次、捕手の入れ替えがある時は、誰もが納得する形で昇格して、試合に出場して、どこからも文句がつかない全力プレーをしてもらいたい。

捕手はホームを守る。1点を防げるかどうか、最後は捕手にかかっている。それた送球をどう受けて、いかに素早く走者にタッチするか。キャッチングもスローイングもリードも大切だ。そして、ホームを死守する懸命なプレーこそ、捕手が捕手たるゆえんだと、私は固く信じる。(日刊スポーツ評論家)