サヨナラ満塁本塁打か。安打でもよかったけれど高山俊はうれしかろう。指揮官・矢野燿大もハイテンションだった。これで阪神は貯金5となった。来週からは交流戦が始まる。近年、セ・リーグの各チームはこれが苦手だ。その直前、駆け込みでどれだけ貯金を作れるかは重要。延長12回、意味のある勝利だ。

ペナントレースの行方はまだ分からない。しかしそう言っていては何も書けないので勝手に決めつける。今季のクライマックスシリーズは現在のAクラス3球団、つまり広島、巨人、そして阪神で戦うことになると見た。

試合前、巨人の指揮官・原辰徳と少し雑談する機会があった。そこでくしくも広島の指揮官・緒方孝市が春先に口にしていたことと同じ意味のセリフが出たのが興味深かった。要するに「阪神には戦う形ができている」ということだ。

「不動のメンバーで戦えるのがいいよね。阪神は。打線も投手もね。ウチは投手がまだ安定してないからね。まあ8月ごろにはしっかりしてくるように、と思っているんだけどね」

苦笑を浮かべ、原はそう話した。日々、阪神に接している立場から言えば、例えば二塁手や遊撃手はときどき代わるし、福留孝介を休ませるときもある。そんなに不動かな、とは思うが巨人を率いる立場からすればそう見えるのだろう。特にブルペンの安定感がそう思わせるのかもしれない。

一方、緒方が言ったのはこういうことだ。「大事なのはどれだけ戦う形をつくれるか、ということなんです。阪神はそれができている。一番できていないのがウチでしょ。まあ、今はそこからですわ」。

その時点で広島は最下位だった。しかしバティスタを3番に固定するなど丸佳浩が巨人に抜けた後の新しい形が次第に出来上がってきた。その結果が現在の順位に結びついていると考えれば、緒方の考えは正解なのだろう。

原は今回の就任以前に12年間で3連覇2度を含むリーグ優勝7度、日本一にも3度輝いた名将だ。また緒方もセでは巨人以外は達成したことのない3連覇を果たし、これも名監督の位置に近づいている存在だ。

そんな2人から「形ができている」と評価されている阪神。その言葉を“ほめ殺し”にさせないよう交流戦前、その2球団を相手にしっかり戦うことが指揮官・矢野燿大の命題だ。(敬称略)