わっしょい、わっしょいの雄たけびとともに「六甲おろし」が聞こえてくるような気がした。早々と行われた対外試合・日本ハム戦で佐藤輝明が大暴れデビュー。試合も先に失点しても打線が取り返す面白い展開だった。CS放送「スカイA」の実況放送で熱くなっていた虎党もさぞかし多かったことだろう。

正直、こんな試合を見せられるとこちらも期待が高まってくる。いっしょになって盛り上がりたいのだが、やっぱり、そう思えないのはこの日も“あれ”が出たからだ。そう、阪神最大の課題ともいわれる失策である。

先発の西純矢が苦しんだ立ち上がりだった。四球と連打で無死満塁。ここで日本ハム期待の若武者、4番・野村佑希が引っ張った強い打球は三塁線に飛ぶ。

これを大山がバックハンドで捕球しにいったもののはじいてしまう。スコアボードには「E」マークが表示された。この場面、理想的なケースは本塁封殺からの併殺だろうが、それは望みすぎ。それでも捕球さえできていれば本塁で殺すことはできたはずだ。

もちろん難しい当たりではあった。内野手の中でもっとも強い当たりが飛んでくる可能性の高いサードにとっては宿命ともされる失策だ。それでもこれをピシャリと決めてくれていれば気持ちも違ったのにな…と思ってしまう。

大活躍の佐藤輝にしても守備で少し不安を感じさせる場面があった。3回、やはり野村が放った左翼線二塁打のクッションボールの処理でもたついた。失策にはならなかったが実況放送で解説していた桧山進次郎(日刊スポーツ評論家)は「もう少し練習が必要ですね」と話していた。これも当然だが打力だけのレギュラー選手になってほしくはない。

投手力はセ・リーグの中でも間違いなく上位に来るはずの阪神。打線も現状、かなり期待できる感じだ。それなら、いや、だからこそ守備力の向上は課題だ。指揮官・矢野燿大も「失策が減ったらもっと勝てる」とこのキャンプ中にはっきりと話していた。

とにかく「今年は違うで!」という様子をこのキャンプ、オープン戦からしっかり見せてほしいのだ。プレッシャーのかからない練習試合でポロポロ失策しているようではヒリヒリする公式戦、終盤の上位争い、優勝争いでは「推して知るべし」である。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対日本ハム 5回裏阪神無死一塁、佐藤輝は右越え2点本塁打を放つ、左は鈴木(撮影・加藤哉)
阪神対日本ハム 5回裏阪神無死一塁、佐藤輝は右越え2点本塁打を放つ、左は鈴木(撮影・加藤哉)