交流戦の出だし、甲子園で負け越したロッテにエキシビションで勝ち越した。練習なので結果は関係ないけれど、やはり、負けるより気分がいい。それにしてもロッテを見ていて「エエな。やっぱり」と思った虎党は少なくないだろう。

藤原恭大、安田尚憲の存在だ。交流戦のときはいなかった藤原はこの3連戦で大阪桐蔭時代に慣れ親しんだ甲子園に勇姿を見せた。28日に猛打賞を放ったのは履正社出身・安田だ。共通するのは阪神が獲得を狙い、クジで破れたということである。

ともに大阪出身。ロッテでもそうだが阪神に入団していれば間違いなく「大スター候補」だった。今頃は一挙手一投足に虎党の注目が集まっていたに違いない。そんな“若いの”が2人もいるなんてエエなあ~ということだ。

だけど今年、よそをうらやましがるそんな気持ちを払拭(ふっしょく)させる存在が阪神に出現した。言うまでもない佐藤輝明だ。こちらも地元・西宮出身、近大を出て、昨秋ドラフトで阪神が当たりクジを引いた。それから、ここまでの活躍は言うまでもない。

その佐藤輝はこの試合、「3番三塁」でスタメン出場。5回にロッテのセットアッパー佐々木千隼から貴重な2ランを右中間に放り込んだ。三振が多いなどと言われても間違いなくスター候補、いや、正真正銘のスターである。

ミスタープロ野球・長嶋茂雄やOB掛布雅之を持ち出すまでもなく、強打の三塁手は「プロ野球の華」だ。説明のつかない“スター性”もその要素。それを併せ持つ気配の男が、いま阪神にいるとは。

この試合、現状、正三塁手である大山悠輔は一塁でスタメンだった。指揮官・矢野燿大は虎番記者に「シーズン中でも起こり得る、あり得ることはやっていこうと思う」などと軽めに語った模様だ。しかし佐藤輝の三塁は大山の離脱中にすでに試している。今、ここでというのは後半戦もあるということだろう。将来、振り返って東京五輪中にひっそり“歴史的なことが”…となるかもしれない。

控えめな大山も独特の味わいを持つ主軸だ。三塁の競争がどうなるかは難しい部分。それでも「4番サード佐藤輝」の誕生は阪神だけでなくプロ球界全体に意味があるような気はする。つまり阪神首脳陣には勝利同様、大きな仕事があるということだ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)