阪神にすれば「エキシビションマッチでよかったで…」という試合だろう。これが公式戦、いや両リーグの首位対決とあって、もしも日本シリーズだったら“激痛”としか言いようのない展開だった。

先発し、6回途中無失点で阪神打線を抑えたオリックス竹安大知は18年オフに西勇輝のFA移籍に伴う人的補償として移籍した投手だ。「突然のことで驚いている。正直寂しいが、気持ちを切り替え、オリックスファンを喜ばせられるような投手になりたい」。移籍が決まったとき、そんな話をしていた。

8回に3人でぴしゃりと切られたベテラン能見篤史は言うまでもない昨季までの阪神おなじみの顔だ。「元猛虎戦士」に封じ込まれた結果は、真剣勝負の場なら虎党には苦い思いがあふれたかもしれない。おまけに一時は逆転に成功した終盤は小林慶祐、岩田稔とブルペンの一角として期待する投手が続けて失点した。

「成長した今の竹安とか能見がおったらブルペンもちょっとラクやったかもしれんなあ…」。そんな気持ちも出そうになるが、それは移籍先でそれぞれ頑張っている、とエールを送るしかない。

それよりもこの2試合は打線の湿りっぷりが目立つ。6回まで走者を出すものの後続がなかった。2、4回、そして5回と3併殺で打線がつながらない。2回は4番大山悠輔、4回は3番佐藤輝明、5回は5番サンズと主軸が一塁走者だったこともあり、足を使った策は使えなかった。

5回2死から安打で出た中野拓夢が二盗を試みたがアウト。このプレーで少し足を痛めたようで交代となった。大事には至らなかったようだが、もはやレギュラーなのでヒヤリとさせる場面でもあった。

結局、得点は7回に原口文仁が放った代打3ランだけ。侍戦士として戦う主砲・吉田正尚を欠きながら、足を絡め、しつこく得点を重ねてきたオリックスの前に完敗。こんな試合展開はやっぱり不安がよぎってしまう。

前日も9回に2点を返して引き分けに持ち込んだが8回まで手も足も出ない打線の状況があった。バントなど細かい策をこの機会にしっかり試して…と思っても足を使える走者が出なければ何も始まらない。勝敗は別にして、後半戦につながる何かがうかがえる試合展開を見せてほしいのだ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)