必死というか何というか。まさに死闘だ。この時期になんでここまでの死闘をしないといかんのか…と思ったりもするが、そこは2勝目がほしい阪神。8投手を繰り出しての戦いは2試合連続の延長12回も引き分け、勝てなかった。

死闘になった一因は先発・藤浪晋太郎にある。今月12日が28歳の誕生日。だから「27歳最後」の登板に期待していた。相手は親交のある大瀬良大地だ。5年前のマッチアップで死球をぶつけ、大瀬良の「神対応」が話題になったことも。投げ合いは20年8月29日のマツダスタジアム以来だった。

「いいところを見せろ」と思っていたが序盤から四球絡みで失点し、結局、4回3失点。開幕投手から3度の金曜日に投げて白星がない。「立ち上がりからタイミングの合わない投球が続いてしまい、修正できずに降板となってしまいました。同点に追いついてくれた打線に感謝したいです」。コメントも真面目な藤浪風だが、やっぱり、もっともっと頑張ってほしい。

この日、メジャー・デビュー戦で安打を放ったカブスの鈴木誠也が言っていたことを思い出す。数年前、広島-阪神戦の前、マツダスタジアムのベンチでぼやくように言っていた。

「晋太郎はどうしてるんですか? 我々の世代の大スターなのに。(大谷)翔平ばっかり目立って」。自身が大打者になったことを忘れたように熱く語っていた。それはそうだろう。甲子園春夏連覇は野球人なら誰から見ても偉業。それを成し遂げた同学年の“代表格”が何をしているんだ-と言いたい様子だった。

その鈴木もメジャーに旅立ち、エンゼルスで開幕投手を務めた大谷翔平ともに日本人選手の顔になっている。藤浪もメジャーがチラホラする存在になるはずだったのに…と今更のように思ってしまう。

開幕戦はブルペン陣がまさかの大逆転をくらい、7回3失点で手中にした勝利投手の権利がスルリと逃げる不運もあった。1球、1球に目を見張るものはある。それを続けられるかどうかなのだが-。来週、藤浪の登板があれば「28歳初マウンド」に注目したい。

いずれにせよ、この引き分けは貯金4のある広島に有利に働く。残りのデーゲーム2試合、阪神は好調な相手を向こうに回し、さらに必死で戦わないとトンネルから抜け出せない。春4月の正念場は続く。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対広島 4回表広島2死二塁、藤浪は西川に右越え適時三塁打を浴びる(撮影・加藤哉)
阪神対広島 4回表広島2死二塁、藤浪は西川に右越え適時三塁打を浴びる(撮影・加藤哉)