「チームが苦しい状況でもな。日程表を見てな、次が阪神戦なら『おおっ!』と思うんや。これでひと息つけるぞってな。砂漠のオアシスや。ほんま阪神戦はオアシスやったわ…」

03年、阪神を優勝に導いた闘将・星野仙一はお茶を飲みながら思い出したようにそう言ったものだ。その闘将が鍛えた中日の指揮官・立浪和義も、今、おそらく同じような思いではないか。横浜でDeNAに連敗して5割に逆戻り。1つの正念場だったが軽々と連勝で貯金2だ。もちろん簡単ではないだろうが。

今季、何度も書いているけれど、また書く。それは「チームを乗せていく起用」をしてほしいということだ。「勝敗は時の運」だし、それにしては負けすぎとも思うけれど結果は仕方がない。それより「よっしゃ!」という手応えを感じる起用がどうも少ない。

この日で言えば1点を追う4回の攻撃か。中野拓夢が二塁打、佐藤輝明が四球で無死一、二塁。打席にはこの日、5番起用の山本泰寛が入った。そう言っては失礼だが普通に見て山本は「5番」を打つ打者ではないだろう。しかし前日、大野雄大に食らいついていく姿勢などから首脳陣が抜てきしたはずだ。

それはいい。糸井嘉男もスタメンで使えず、台所事情は苦しいはず。「5番山本」にかけたのならそれはそれだ。その4回無死一、二塁で山本は犠打を決めた。バントはうまい。これで1死二、三塁。絶好の同点、逆転機をつくった。

しかし次は大山悠輔である。この日は6番に下がっていた。「4番降格」は不調だからだろう。2回にどん詰まりの適時打を放ってはいたが、ここでの結果は三ゴロ。小野寺暖も倒れて同点機を失い、打線はそのまま8回に近本光司が中前打を打つまで13人連続で凡退となってしまった。

山本は犠打もいけるし、大山につないでおけば…。そう思うのは常とう手段というか普通だろう。首脳陣として手を打ったようにも見える。しかし山本を5番に起用したのなら打たせればいいではないか。なぜ降格させた打者に重責を与える。そういうところがどうも乗っていけないような要因に感じて仕方がない。

北條史也にしたところで前日に1軍に呼んだのならスパッとスタメンで使えばいいと思う。このまま中日の、いや、セ・リーグのオアシスになっていていいのか。阪神タイガース。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

中日対阪神 試合終了となり足早に引き揚げる矢野監督(中央)(撮影・森本幸一)
中日対阪神 試合終了となり足早に引き揚げる矢野監督(中央)(撮影・森本幸一)