DeNAに元気がない。野手総合コーチとして古巣復帰した石井琢朗が今月6日に左小脳梗塞を発症したことも影響してか不調だ。相手を心配する状況でもないけれどスルッと勝ってしまうとそんなことを思う。

しかし勝負は勝負。弱っているDeNA相手にわずか2時間32分での逆転勝利だ。殊勲は佐藤輝明、大山悠輔の主軸コンビ。ここに来て、チーム状況が上がって3位浮上だ。開幕時を思えば、よくここまで盛り返してきたと思う。だが借金生活は同じ。1日も早い5割復帰が今の目標だ。

「頼もしいね。まだまだ。もっともっと、打ってほしい」。大山の活躍について指揮官・矢野燿大は貪欲に言った。そんなセリフを聞くと、また、あのシーズンを思い出す。

「こんなんで満足なんか。おまえらは。まだまだ、もっともっと勝ちたいんや」。闘将・星野仙一が繰り返した03年。勝利への飽くなき追求の日々だった。当時を思い出し、そう言えば、アレもこの時期だったかなと振り返ると、はたして、そうだった。

03年6月17日なので1日違いだが、ほとんどジャスト19年前。当時の横浜戦で阪神は2-4の9回裏に3点を挙げ、サヨナラ勝利している。ヒーローは現在の監督、矢野だ。満塁から右中間を破るサヨナラ三塁打を放った。あの頃は連日勝って原稿量に疲労困憊(こんぱい)。「きょうはひと息つかせてもらおう」と思っていたら、あっという間に勝って悲鳴を上げた。

金本知憲を筆頭にクリーンアップが打ちまくった当時だが矢野と現在の内野守備走塁コーチ・藤本敦士が結成する「恐怖の下位打線」も光った。今の阪神、当時と比べ、欠けているものはいろいろあるが、そこも1つではないか。

梅野隆太郎が打率1割6分5厘、坂本誠志郎が同1割5分8厘などと捕手が打ってない。当時とは違う「併用制」が影響しているのかどうか、下位打線、特に捕手の打撃がよくない。ここが上がってくれば相手へのプレッシャーは大きくなる。下位から“日替わりヒーロー”が出れば本当に上昇ムードになるのだ。この日で言えば梅野に1本、出ていればと思った。

捕手の起用法に関しては矢野の強い考えがあるのだろうが、結果としての打撃成績は改善すべきポイントだろう。勝っているときこそ、足りないところを見据えての策を練ってほしい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対DeNA DeNAに勝利しスタンドに手を振る矢野監督(撮影・加藤哉)
阪神対DeNA DeNAに勝利しスタンドに手を振る矢野監督(撮影・加藤哉)