「なんやねん」。虎党はそう文句を言っただろう。こちらも同じだ。勝負に勝ち負けはつきもの。しかし10試合で9敗1分けとは。よりによってAクラスを争うライバル球団に、だ。

少々、ヤケ気味で厳しいことを書く。勝った試合はもちろん負けた試合で結果の出なかった選手についてどうこう言うのは酷だし、避けている。しかし期待しているからこそガックリきてしまうことはあるのだ。

高山俊である。この日の先発・遠藤淳志に対して「7番左翼」でスタメン起用された。高山のスタメンは5月27日ロッテ戦以来、今季7試合目。過去のスタメン6試合では18打数2安打の成績だった。代打ではここまで25打数8安打の打率3割2分とよく打っている。普通に考えれば高山ではなく糸井嘉男でいいのではと思った。

しかしシーズンは長い。特に蒸し暑いこの時期、特に暑さがこたえるマツダスタジアムとあってベテランは温存したいのかもしれない。もちろん、それだけではなく、やはり高山にも存在感を発揮してほしい思いはあるだろう。

佐藤輝明、大山悠輔だけでは勝てない。次の存在がいるのだ。同じドラフト1位でもあり、高山への期待はある。活躍さえすれば“格”では2人に負けていないはず。そんな期待で起用しているのなら「甘い」と言われるかもしれないが、新たに貢献できる選手に出てきてほしいというベンチの思いも分かる。

だからこそ高山には奮起してほしかった。しかし結果は3打数無安打、1三振。相変わらず下位打線が打たないチーム状況を変えることはできなかった。勝負に「たられば」はないが、2回、あるいは4回の好機で高山に1本出ていれば試合の流れは大きく変わっていたと思う。

「もう1点ほしいなというところはもちろんあるけれど。負けるとね。難しいところやね」。指揮官・矢野燿大がそう言ったのにはそのあたりもあるはず。敗戦の責任は指揮官にあるが、起用されて結果を出せないのは選手の問題でもある。

こんなにグチを言うのは高山にはそれだけの力があると思っているからだ。かつての新人王。打撃センスは誰もが認めるところ。それが発揮できないのはなぜか。もう1度、しっかり見直してほしい。眠れる猛虎・高山には奮起してほしいし、窮地脱出にそれが必要なのだ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)