阪神にとってシーズン折り返しの72試合目は意味のある節目だったと思う。「昨日の敵は今日の友」という感じで3連敗を喫した広島がDeNAを下していた。勝てば4位浮上、負ければ最下位転落という状況で試合は進んだ。

ヤクルトが強すぎるし、Bクラスで少々、上下してもペナントの行方に大きな影響はない。しかし、そこはそれ、それぞれのファンにとって勝敗は一喜一憂する出来事だ。もちろん阪神にすればAクラスに再浮上するためにも大事な試合。そこをなんとか勝ち切り、連敗を止め、1日で4位に浮上する結果となった。

殊勲者は梅野隆太郎ら多くいるだろうが、ここは独断で青柳晃洋の“心意気”を買いたい。7回、青柳が打席に立つのを見て「おや」と思った。その表まで7回を2失点でしのぎ、勝利投手の権利を手にしていた。最近の野球なら先発投手は7回を投げ切れば、合格だろう。

岩崎優が戻り、湯浅京己もいる。「勝利の方程式」にマウンドを譲ってもいい場面だ。しかしベンチの考えは違った。「あそこはヤギにいってもらいたかったし、任せるしかないというところ」。指揮官・矢野燿大は青柳への期待を込めて振り返ったし、青柳自身、続投の意思だったはず。

だが、この日の甲子園、浜風は吹いていたとはいえ一気に暑くなり、厳しいコンディション。これはこたえる。はたして8回、最下位脱出を狙う中日打線につかまり、青柳は2失点。走者を残して降板することになった。

7回でスパッと代えていれば…と言えばそれまでだが背景には最近の流れがあった。3敗1分けだった4試合、阪神は先発投手がすべて早々とマウンドを降りている。広島の3試合は西勇輝、ガンケル、そしてウィルカーソンがそろって5回で降板。その前、19日DeNA戦に至っては西純矢がわずか3回1/3でKOされていた。

そこに加え、前日までのマツダスタジアムは2試合連続の延長戦。ブルペン陣をいやというほどつぎ込んでいた。だからこそこの試合、エース青柳に託された期待は大きかったのだ。

心意気なんて古くさい言葉を使ったが、それがあってこそのエース。それが分かるからこそ救援陣も必死で投げたし、打者も懸命に食らいついていったのだ。青柳に白星はつかなかったが、いい勝利だったと思う。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対中日 阪神先発の青柳(撮影・前岡正明)
阪神対中日 阪神先発の青柳(撮影・前岡正明)