「勝負事には必ず“流れ”があるんです。目には見えないけれど。その流れを大事にしないといけない」。広島3連覇監督・緒方孝市(日刊スポーツ評論家)が監督時代も評論家になってからも、常々、口にしている言葉だ。

広島は前カード、東京ドームで3試合連続満塁弾を放つなど巨人をボコボコにしてきた。巨人はこの日もヤクルト戦で菅野智之が満塁被弾。なんとか試合には勝ったが、これはコロナ禍で苦しむヤクルトのマイナスの流れが止まらなかった面もあるかもしれない。

そして広島は乗っているはずだ。そこでの雨天中止。敵将・佐々岡真司はやりたかったに違いない。久々の先発となる薮田和樹も同じ思いだったろう。阪神も甲子園6連戦を4勝2敗で終えたが13日の巨人戦で13得点を挙げた後は3点、2点、1点、そして前日の3点と打線は下降気味だ。

しばらく出番がなかったベテラン糸井嘉男も登録抹消になった。スタメンで出場を続ける選手たちに疲れもあるだろうし、この広島戦が3試合とも行われていれば9連戦だった。いい休養という気もするし、阪神はこの雨天中止を前向きにとらえた方がいい。

その“流れ”の話でいけば19日からの2連戦でポイントになるのは秋山翔吾だと思っている。大リーグ帰りで広島に加入した秋山が1軍のゲームに出たのは今月8日から。阪神はその直前まで広島戦だったので、まだ秋山のいるカープとは対戦していない。

巨人に3連勝した広島は15日の初戦で秋山がNPB復帰後初本塁打となる1号2ランを放っている。これがチームに勢いをもたらしたことは間違いない。そこからの3連勝だ。

当然、阪神は警戒しなければならない。西武時代の秋山は阪神戦でよく打っている。交流戦31試合で118打数41安打の打率3割4分7厘、2本塁打。本塁打は現在コーチの安藤優也、岩貞祐太からそれぞれマークしている。

「秋山1人と対決するわけじゃないんで。誰か1人抑えても勝てるわけじゃない。秋山だけにこだわるわけにはいかない。前後の打者も抑えないとダメ」。指揮官・矢野燿大はそんな話をしていたようだ。

もちろんその通りなのだが“勝負の流れ”という面で見れば、ここで新加入である大物選手のエジキになることは絶対に避けなければならない。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

ポーズを決める広島秋山翔吾(2022年7月16日撮影)
ポーズを決める広島秋山翔吾(2022年7月16日撮影)