どないしたんや。失礼だがそんな感じだ。落ち着きはらっているぞ。藤浪晋太郎。7回1失点で今季2勝目をマークだ。結果以上に感じるのがその冷静さ。表情からして、しっかりしたマウンドさばきである。

いいな。強く感じたのは2回、先頭・後藤駿太への投球だ。「上州のイチロー」。今季途中まで在籍したオリックスではそんなことも言われた俊足。塁に出したくない。懸命にファウルで粘るその後藤を9球目で一ゴロに切った。その間、ボール判定は2球だけ。簡単に制球を乱さない安定感がある。

その姿を見ていて思い出した。半年前、宜野座キャンプで話した会話。コロナ禍で息抜きの外出もできない状況は今も続く。藤浪の2月は読書ざんまい。サウナの入り方、ビジネス書も読んでいると言うので思わず口走ってしまった。「そんな本、読んでんの。ビジネスマンに転身や、とか思てるんちゃうやろね」。

そんな突っ込みに藤浪はこう答えたものだ。「そんなん、とんでもない。このまま終わる気はないですからね。今年はいけると思います。なにか感覚がいいんです。昔みたいな感じがしますね」。そのときも、いや最近まで内心で「本当か」と思っていた。だが本人にしか分からない感覚は正しかったようだ。

ずっと好調が続くかどうかはともかく。土曜に先発を続けるとして今季はあと3度の計算だ。本拠・甲子園での登板は次回9月3日の巨人戦。そこでも、こんな投球ができれば、いよいよ「藤浪復活」をアピールできるかもしれない。

中日の後藤ではなく本家のイチローはこの日、マリナーズ球団の殿堂入りが発表され、会見していた。メッセージを送ったらイチローらしいひょうひょうとした返信をしてきたが、それはともかく、また“名言”をモノにしていた。

「結果で黙らせる快感をボクは知っている」。藤浪の投球を見ていて、その言葉をかみしめた。一部メディア、虎党からはトレード候補、現役ドラフトの目玉などと言われ放題。そこはプロだし、結果が出なければ野球に関しては、いろいろ言われても、ある程度は仕方がない。

それを黙らせることができるのは結果だけ。イチローの名言は藤浪にも当てはまる。5割復帰で3位確保がテーマになってきた阪神だが、ここに来て「藤浪を見る」楽しみは加わった。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

中日対阪神 藤浪のアンダーシャツにはShinの文字(撮影・上田博志)
中日対阪神 藤浪のアンダーシャツにはShinの文字(撮影・上田博志)
中日対阪神 3回裏、力投する阪神先発の藤浪(撮影・森本幸一)
中日対阪神 3回裏、力投する阪神先発の藤浪(撮影・森本幸一)
中日対阪神 ヒーローインタビューを受ける藤浪はファンの拍手に帽子をあげて応える(撮影・上田博志)
中日対阪神 ヒーローインタビューを受ける藤浪はファンの拍手に帽子をあげて応える(撮影・上田博志)
中日対阪神 試合終了、ナインとタッチを交わす藤浪(中央)(撮影・森本幸一)
中日対阪神 試合終了、ナインとタッチを交わす藤浪(中央)(撮影・森本幸一)