今季最後の名古屋遠征は考えさせられる3連戦になった。目立ったのは高卒3年目・岡林勇希、同2年目・土田龍空という中日の若手野手だろう。7回にダメ押しの適時打を放った土田は阪神戦が得意。対戦打率3割8分7厘は通算2割5分を考えれば驚くような数字だ。岡林も阪神戦で30安打を放ち、これもリーグ対戦別で最多である。

守りもいい。土田の遊撃守備などは経験を考えればハイレベル。敵将・立浪和義が今後を見据えてのチーム作りをしているのが目に見えて分かる。現在は最下位のチームだが来季以降、成長する印象だ。

対して阪神である。先発の新人・森木大智はよかった。6回に捕まったとはいえ、そこまで小気味いい投球だった。打線が援護できていれば結果はどうなっていたか分からない。十分、合格点の内容だ。

しかし相変わらず打線がパッとしない。好投手・柳裕也を相手に好機はつくるが決定打が出なかった。9回に出たロハスの二塁打が4回の無死一、二塁で出ていればとは思うが「たられば」を言えばキリがない。

持ち味の「超積極的」も影を潜めた。3回に先頭の中野拓夢が四球で出た無死一塁。いつも思うけれど仕掛けていってほしかった。1死から出た5回に中野は盗塁を決めている。先手を取って仕掛けていく姿勢は徹底してほしいのだ。前日、藤浪晋太郎で勝てたのは1回にエンドランを決めて攻めたからだろう。

若手野手が目立った中日に比較し、阪神にはその部分は少ないかもしれない。スタメンを見ても大山悠輔、佐藤輝明は言うまでもなく中野、近本光司、あるいは木浪聖也は即戦力での入団だ。今季、育ってきた選手として島田海吏が上げられるが島田も大卒5年目、27歳の世代になる。

9月も間近になったこの時期。例えばこの日、ファーム交流戦の巨人相手に本塁打をマークした井上広大らを起用したいところだが、まだ上位を狙う阪神としては筒いっぱいで戦わなければならない部分もある。そこは人気チームとして宿命のようなものがあるのは否定できない。

森木を援護できなかった打線について指揮官・矢野燿大は「やっぱり、さみしいよね」。古巣相手の名古屋で監督最後の戦いを終え、左翼スタンドまで近寄って頭を下げていた。その胸中に去来したものは何だったのか。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

中日対阪神 5回裏中日2死、大野奨を空振り三振に仕留め、笑顔でベンチへ戻る森木(撮影・前田充)
中日対阪神 5回裏中日2死、大野奨を空振り三振に仕留め、笑顔でベンチへ戻る森木(撮影・前田充)
中日対阪神 力投する阪神先発の森木(撮影・前田充)
中日対阪神 力投する阪神先発の森木(撮影・前田充)