藤浪晋太郎にとって大事なのは「行く」ことだ。そう書いたのはちょうど3カ月前の10月18日。過去にポスティング制、あるいはFAで渡米の意向を示しながら条件面などで折り合わずに元の球団に残留するケースがあった。

その場合、メンタルか何か理由は不明だが、なぜか前年度を上回る働きができない場合が多いと感じる。もしも条件などに不満でも行くと決めれば行った方がいい。その意味で、今回、アスレチックスへの入団会見までこぎ着けたことはよかったと思う。

条件面での心配は杞憂(きゆう)で最近の日米懐事情をあらためて感じさせるように、まだ大リーグで1球も投げていない藤浪に対し、ア軍は阪神を軽々と上回る条件を提示した。

大阪桐蔭で甲子園春夏連覇の偉業を成し遂げた「猛虎のスター」。大谷翔平、鈴木誠也とすでに大リーグで活躍する2人とは同期。いずれも高校からプロという点でも同じで、ついにその3人が米国でプレーするときがきた。

言うまでもなく最近の風潮は日本で活躍できれば「次はメジャー」だ。そういう流れに対し、かつてイチローに聞いたことがある。イチローが渡米した01年は、まだ地元のファンを振り切って行くのには迷いがあった時代。変わった流れをどう見ているのか。

「多くの選手が挑戦するのはいいことだと思います」。そう話した上で強調したのはこういう点だ。

「これなら通用するだろうから米国に…というのは違うと思う。おカネの話なんて、もっと違いますでしょう。メジャーでやりたい。やってみたい。そんな気持ちが大事だと思います」

その“条件”に藤浪が当てはまるかどうか。独断と偏見で言わせてもらえば、該当する。鳴り物入りで阪神に入団し、当初はそれなりの結果を出したが徐々に苦しくなってきた。はっきり言って、このまま阪神にいても尻すぼみになるのは見えている。

そこへ「米国でやりたい」という気持ちが芽生えてきた。体格だけなら米国でも大きいだろうが阪神での成績を考えれば「通用するかな?」と思う状況かもしれない。それでも「行きたい」という気持ちを優先させ、球団も認めた。イチローは渡米時、27歳。28歳の藤浪が阪神時代と見違えるような活躍を見せるか、どうか。これは楽しみが増えた。素直にそう思う。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

12年8月、夏の甲子園で春夏連覇を達成し抱き合う大阪桐蔭・藤浪(右)と森
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