「決勝点」は宜野座キャンプから続けてきた連係プレーの結果だった。6回表、オリックスの攻撃は1死一塁から頓宮裕真が左中間フェンス直撃の二塁打。これで一塁走者・西野真弘が生還した。

この打球に対する阪神守備陣の動きはこうだ。左翼・井上広大がカットマン木浪聖也に送り、木浪が捕手・坂本誠志郎にバックホーム。この送球が少し三塁側にそれる。コリジョン・ルールの適用をおそれた坂本が体を引き、左腕を伸ばした形で捕球しにいったが捕れなかった。これで西野の生還を許し、打者走者・頓宮も三塁に生かす結果に。このプレーで木浪に「失策」がついた。

少しややこしいのは生還そのものは失策ではなく、打者走者の三進に悪送球の失策がついたという点だ。「本塁はクロスプレーなので失策にするのは厳しい。でも捕手が捕球できていれば三進はないはずなので」。公式記録員は説明した。

このプレーに「あれは送球間で進んだいうことちゃうん?」と言ったのは指揮官・岡田彰布だ。試合後に内野守備コーチ・馬場敏史に動きの感想を聞いていたとき。「詳しくはビデオでチェックしないとね」と馬場が話している間に話に“参戦”してきた。

虎番キャップたちの前でも「アウトと思ったけどな。ちょっとそれた。まあコリジョンのあれがあるからな」と話していた指揮官。あらためて「あれは普通のプレーに見えたけどな。ふ~ん」。キャンプから徹底してきたカットプレー。そこでギリギリの送球をした木浪の動きを評価している様子だった。

「いい感じだと思ったんですけど。もう少しこっち(一塁側)に投げればというのはありますが、それだとタッチが遅くなる。紙一重のプレーだと思うし、気にしませんよ」。木浪も意気盛んに話した。

同じ失策が記録されても、目の当てられないものもあれば、こういう“勝負”の結果、背負わなければならないものもある。「アウト、セーフ関係なしにして、やることはできてる感じよ」。指揮官もそう話した。

カットプレーでは8回にドラ1・森下翔太が際立つ場面もあった。敗戦もあって見どころに欠けたゲームにも思えたが、今後に生かすポイントだろう。帰ってきた指揮官の甲子園初ゲーム。練習ではできない守りの意識を高める意味でも、いい経験になったはずだ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

オープン戦・阪神対オリックス 6回表オリックス1死一塁、頓宮の左二塁打で一走西野(右)が生還する。捕手坂本(撮影・上山淳一)
オープン戦・阪神対オリックス 6回表オリックス1死一塁、頓宮の左二塁打で一走西野(右)が生還する。捕手坂本(撮影・上山淳一)