「勝たなあかん試合やわな」。指揮官・岡田彰布はそうつぶやいた。5番・佐藤輝明が記念の球団8000号を豪快に放ったのを始め、3番ノイジー、4番・大山悠輔のクリーンアップ全員に本塁打が飛び出したゲーム。朝からの雨だったにもかかわらず大入りの4万50人、甲子園観衆は多いに盛り上がったが、結局、敗戦となった。

「連勝って、そんなに勝てるかいな」。イラつき気味に岡田が言ったように連勝はいつかは止まる。それでも「らしくない」形なのはもったいなかった。

先発・青柳晃洋がまた1回に失点、それも5点の大量失点で試合にならないと思えた。だが阪神打線が奮起。クリーンアップ3発を含む猛攻で5回には追いつき、青柳の黒星は消した。カープ・ファン以外なら虎党でなくとも面白い展開だったかもしれない。

阪神は最下位・中日に次いで本塁打が少ないチームだ。この日の3発を含めても21本塁打。それでいて試合前までチーム打率は2位タイ、得点は3位につける。特筆すべきは得失点差が40点以上あることで、これはリーグ・トップだ。

しぶとい攻撃に加え、投手陣が頑張ってる証拠でもある。特に好調なのがブルペンだ。湯浅京己が抜けた後もしっかり抑えている。しかし、この日はそれが崩れた。同点の6回に登板した2番手・及川雅貴が1失点で勝ち越される。さらに中継ぎ転向となった西純矢が2イニングを投げて1失点。そして9回もビーズリーが堂林翔太に1発を浴び、救援投手3人で3失点となった。

「あの四球やな。あれで負けやろ」。岡田が苦い顔をしたのは西純に対してだ。2イニング目の8回、先頭・松山竜平に対して出した四球を悔やんだ。松山が出れば、代走が出てくる。相手のペースだ。現実となったその展開が岡田には見えていた。それだけにすでに勝ち越されていた場面だったとはいえ、面白くなかったのだ。

自身のやりたい野球をやられた悔しさもある。本塁打がバンバン出れば見ているファンは楽しいし、実際、面白いのだが岡田の目指すところは別にある。投手を中心にした守りの野球。それができなければ最後には勝てないからだ。

「明日(20日)負けんことやろ」。岡田はそう絞り出した。Aクラスに踏ん張る広島を波に乗せることも、当然、危ない。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)