「うわっ」と思わず声を出してしまった。4回2死走者なしから飛び出した日本ハムの1番・江越大賀の4号ソロ。コンパクトにさばいたように見えた打球はライナーで飛び込んだ。

こんな当たりを阪神でもガンガン打ってたらな…。などと、つい遠い目をしてしまいがちだが虎党も同じ思いのよう。阪神応援席からも結構、拍手が湧き起こっていた。「ロマン砲」などと言うらしいが期待されながら芽が出ず、トレード移籍。そこで頑張っているのはいいことだ。

「そんなに振らなくていいよ。当てるだけで飛ぶんだから」。江越に対して敵将・新庄剛志はこんなアドバイスをしているという。日本ハム担当記者・中島宙恵が教えてくれた。

阪神時代から「パワーなら右に出る者がいない」と言われていた江越。だがそれを売りにしてブンブン振り回し、三振する姿をよく見たのも事実。かつて取材したとき、江越は趣味のゴルフに例えてこんな話をしていたこともある。

「ドライバーショットは思い切り振る方が飛ばないんですよね。ゆっくり振った方が意外にいいんですよ。バット、野球も同じかなと思ってるんですけど」

プロ野球のレベルは経験者にしか分からないけれど、江越が言うこの話は少しでもゴルフをたしなむ人なら分かるだろう。2つが本当に同じ理論なのかどうかは知らないけれど。

エスコンフィールドの記者席で中島の話を「なるほどな」と聞きつつ、気になったのが佐藤輝明の打撃だ。この日の相手先発は右下手投げの鈴木健矢。野球のセオリーから言えば、やはり左打者が重要になる。

だからこそ指揮官・岡田彰布は3番に前川右京を入れ、DHで糸原健斗をスタメンに入れてきた。それでも、やはり、期待されるのは佐藤輝だろう。しかし4打数すべて飛球に倒れた。プロの技術的なことは分からないし、想像でしかないのだけれど、やはり「力みが入っているのかな」という感じもする。

連続三塁打を放った7日楽天戦(楽天モバイルパーク)では力まず、スムーズに振れているように見えた。新庄が江越にアドバイスした「当たれば飛ぶ」というのは佐藤輝にも共通することかもしれない。もちろん彼からすれば「そんなことは分かっている」という感じだろうけれど、湿りがちな打線、ここは猛虎の看板が放つ一撃が見たい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

日本ハム対阪神 4回裏日本ハム2死、江越は右越え本塁打を放つ。投手は西純(撮影・佐藤翔太)
日本ハム対阪神 4回裏日本ハム2死、江越は右越え本塁打を放つ。投手は西純(撮影・佐藤翔太)